抄録
公共政策に関わる意思決定や合意形成場面において、他の価値とのトレード・オフを忌避する「保護価値」が介在する場合、異なる価値間の比較衡量が出来ず、その実践に向けた適切な判断を行うことが困難となる可能性がある。本研究では、公共政策の説明方式に着目し、保護価値の緩和効果について検討することを目的としている。具体的には、公共政策の説明方式として、当該政策のメリットとデメリットの双方について述べる二面提示的な説明と、そのメリットのみを述べる一面提示的な説明を取り上げ、それらの説明方式が保護価値に及ぼす効果について検討することとした。この目的の下、原子力発電事業の再稼動問題を取り上げて、その説明の仕方によって保護価値が緩和する効果を検証するための仮想的なシナリオ実験(n = 120)を実施した。その結果、二面提示の方が、一面提示に比べて、保護価値保持者に対する説得効果が高く、彼らの保護価値保持傾向が緩和する傾向にあることが示された。さらに、その効果の条件として、二面提示の説明方式では、説明者が自分の立場を理解しているとの認識が増進し、説得者への信頼感が醸成される傾向にある可能性が示された。最後に、本研究の知見が、公共政策を巡る合意形成問題に示唆する点について考察した。