抄録
緑地を改変する土地開発は、自然環境に大きな影響(エコロジカル・インパクト)を及ぼす。そのため日本では、大規模開発行為は、環境影響評価法や自治体の条例に基づき、自治体の環境影響評価委員会により審査されている。それにより、環境配慮が実施されるようになった。しかし、環境影響評価法や条例の対象となっていない小規模開発行為では、自然環境に関する対策が十分にされないまま開発されることを防ぐのは難しい。また、開発者が委員会の審査結果に対応しない場合に、それに対する罰則の規定は無いため、委員会の見解が現場で反映される保証はない。
名古屋市では緑地を分断する道路建設にあたり、環境対策を実施するため「インスペクター制度」が導入された。それにより、実施計画段階から施工段階まで一貫してインスペクターが関わり、詳細な環境配慮が実施された。この制度の導入は、日本初の試みである。本研究では、インスペクターの役割を探り、インスペクター制度導入事例の経緯を検討することで制度の有効性を分析し、緑地開発事業への導入の方向性を示すことを目的としている。