抄録
住民が能動的に利用する豊かな生活空間を創出する上では、生活空間の共用、中でも公共空間の住民の私的利用を再考する必要があり、その意味についての知見の蓄積が必要とされる。1970年代以降漁業集落から市街地へと急速に変貌してきた千葉県浦安市元町地区では、 漁業集落時に生活空間の共用が行われており、現在は住民による公共空間の私的利用がみられる。本稿では、漁業集落時からの空間変化・空間利用の変化を経て現在は異なる特徴を持つ小エリアに対象地を整理した上で、各エリアの公共空間の私的利用の要因と意味に関する分析・考察を行った。その結果、公共空間の私的利用の一部が、地域の空間的・社会的特徴によって成立していた漁業集落時の生活空間の共用に関する地域特性の継承である可能性を示した。