抄録
現在、様々な観光地がインフラ整備や景観の改善などによる魅力の向上や交通課題の解決に取り組んでいる。しかし、多くの事例ではインフラ整備直後の観光動態による評価が中心であり、中長期的な影響や観光の質への検討がなされていない。本研究では、2013年に式年遷宮に合わせて参詣道が整備された出雲大社地区の参詣道整備事業を対象として、効果検討の状況を整理するとともに、交通量調査、文献調査、アンケート調査を実施し、整備実施後5~6年後の効果について訪問者数、経済効果、訪問者の満足度の3点から検討した。その結果、整備実施直後に効果検討の調査が多く実施されたものの、その後はほとんど効果の検討がなされていなかった。また、文献調査・アンケート調査の結果、観光情報誌に掲載された店舗数や訪問者の満足度はインフラ整備直後に整備によって増加が確認された状態と比較してさらに有意に増加していた。インフラ整備による訪問者や地域経済への影響、ならびに訪問者の活動の質の向上が中長期的に発現する効果を示すものであると考えられる。