抄録
近年日本で急増する外国人住民に対し、災害時にどのような方法でどのような情報を提供すればよいか明らかにすることを目的として、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)で甚大な被害を被った広島県の呉市、東広島市、福山市を対象に、平成30年7月豪雨の際の外国人住民に対する情報提供について、行政の外国人住民のサポートスタッフと日本語教室主催者にヒアリング調査、外国人住民にアンケート調査を行った。その結果、外国人住民は避難所の場所や避難の仕方、災害の状況について、日本語と同じ情報をスマートフォンの速報または身近な人を通じて、英語または「やさしい日本語」で発信して欲しいという要望を持っていることが明らかとなった。さらに、防災訓練の実施を望む声も確認された。これらの要望の実現には、平常時から多言語の情報発信のための文面の準備や人材確保などの準備をしておくことが重要であるが、ヒアリング調査を行った2つの市に共通して、非常時に外国人住民全員に情報を伝える手段が確立出来ていないという課題を抱えていることが明らかになった。そのため、まずは「やさしい日本語」の活用や外国人コミュニティと日頃から連絡を取るなど、外国人住民に情報伝達を行う方法を確立することが急務と言える。