富山市では、本格的な人口減少社会の到来や急速な少子超高齢化の進行などを見据え、将来にわたって持続可能な都市構造への転換を実現するため、鉄軌道をはじめとする公共交通を活性化させ、その沿線に様々な都市機能が集積する「公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」を推進してきた。そのリーディングプロジェクトとして、平成18年4月の全国初の本格的LRTとなる「富山ライトレール」の開業、平成21年12月の市内電車の環状線化、平成27年3月の北陸新幹線開業にあわせた市内電車の富山駅への乗り入れ開始など、公共交通活性化施策を着実に実施してきた。そして、令和2年3月21日、富山市が進める「コンパクトなまちづくり」の一つの到達点である路面電車南北接続事業がここに完成し、市内に全長約15kmに及ぶLRTネットワークが形成され、路面電車の利便性が飛躍的に向上するとともに、明治41年以降、富山駅開業により南北に分断されてきた市街地の一体化が図られ市民百年の夢が実現した。本研究では、富山市のコンパクトなまちづくりの歴史的意義を考察するため、同市の近代化に向けたまちづくりを都市のレジリエンスという観点から、3つのステージに区分し、第1ステージ(都市計画黎明期の大土木工事と日本海側初の市電の開通)や第2ステージ(戦災復興とソーシャルキャピタル)で行われてきた明治以降の長年のまちづくりに支えられて、現在の第3ステージ(コンパクトなまちづくりによって実現された路面電車南北接続事業の完成)が実現できたことを明らかにする。
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