実践政策学
Online ISSN : 2189-1125
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6 巻, 2 号
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  • 沼尻 了俊, 宮川 愛由, 林 幹也, 竹村 和久, 藤井 聡
    2020 年6 巻2 号 p. 121-130
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    日本では、小泉内閣以降,新自由主義に基づく政策が継続して実施されてきているが、その帰結として,デフレ不況の深刻化や格差拡大、国力の低下などが指摘されている。民主主義を採用する日本においては、国民の新自由主義に対する支持意識の水準が政策決定に影響を及ぼすものと考えられるため,新自由主義に対する支持意識と規定因の因果関係に対して実証的知見を蓄積することとした。本研究ではまずSchelerの議論に基づきルサンチマンの概念を定義し、公的主体に対するルサンチマンが新自由主義に対する支持意識に影響を及ぼすという因果構造仮説を措定し,質問紙調査と共分散構造分析によって仮説を検証した。その結果、日本には公的主体に対するルサンチマンが存在し、新自由主義に対する支持意識に影響を及ぼしており、とりわけ公的主体に対する否定的な感情が新自由主義支持意識に最も大きな影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、新自由主義化に伴う格差拡大が社会構造としてルサンチマンを増長する可能性があり、公的主体へのルサンチマンと新自由主義化の間に循環構造が存在する可能性が示唆された。
  • Safety-I及びSafety-IIを中心に
    加藤 淳
    2020 年6 巻2 号 p. 131-136
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    ここ数年、レジリエンスエンジニアリングと呼ばれる新しい安全へのアプローチが注目されている。レジリエンスとは、物やシステムの有する弾力性や柔軟性のある特性を意味するが、Hollnagelにおいては、社会技術システムの安全を確保するため、Safety-I及びSafety-IIという安全の概念を提案する。本稿では、Safety-I及びSafety-IIの考えをレジリエンスエンジニアリングに絡めながら展望するとともに、看護師のレジリエンスについて考察する。
  • ファシリテータに必要な要素についての一考察
    吉武 久美子
    2020 年6 巻2 号 p. 137-147
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    医療現場では、様々な倫理的問題が存在する。医師、看護師などの医療の専門家には、倫理的問題に気づくととともに、問題解決が求められる。医療現場で働く看護職に対する倫理教育は、日本において、OJTあるいは Off-JTにて必要不可欠とされている。しかしながら、医療現場で働く看護職のための倫理教育プログラムは、各々の医療施設の部署に委ねられている。合意形成の理論と方法論を用いた倫理教育は、受講者が倫理的リスクに気づくとともに関係者と多様な価値を共有し、問題解決のための方法論の理解と実施ができることを目標とする。本研究の目的は、医療現場で働く看護職に対する合意形成とファシリテータ教育を取り入れた倫理教育の事例を紹介した上で、医療現場の話し合いのファシリテータで必要な要素を考察することである。臨床現場の話し合いで必要なファシリテータの要素は、①話し合いの計画と事前準備、②会の方向性を示すコミュニケーション、③参加者の関心懸念を引き出すコミュニケーション、④確認、言い換える、まとめるコミュニケーション、⑤個人と全体の両方の視点でみる力、⑥計画遂行と臨機応変に対応することの両方をもつこと、⑦見られていることへの意識、⑧雰囲気と環境づくりである。合意形成の方法を用いた倫理教育プログラムとファシリテータ教育を一度に統合して行う意義は、臨床現場で直面する倫理的問題に対して、気づくことと具体的な行動をつなげて考えられることが示唆された。
  • 群馬県高崎市を事例として
    塚田 伸也, 森田 哲夫
    2020 年6 巻2 号 p. 149-158
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    わが国の地方都市では、若者が大都市へ転出するとともに少子化による急激な人口減少と高齢化の進展による地方都市の衰退が深刻な課題となっている。地方都市において、都市活動の持続性を確保しながら、都市の魅力や市民生活の質の向上していくことが求められており、都市の集約化政策が検討されている。本研究では、生活を支える交通行動として私事交通に着目することとした。本研究の目的は、地方都市の住民の私事交通行動を行動群に類型化し、各行動群の居住意向を明らかにすることである。分析には2015年に実施された群馬県パーソントリップ調査データを用い、群馬県高崎市を研究対象地域とする。分析の結果、私事交通行動による6つの行動群に類型化し、各行動群の基礎的な特性を明らかにした。次に、各行動群の居住意向を明らかにした。分析結果を考察することにより、都市部である高崎地域においても自動車依存の傾向が高く、都市の集約化政策を進めるためには、公共交通などの他の交通手段への転換を促す政策が有効でることがわかった。郊外部の地域においては、車依存の女性の行動群が類型化され、子育て支援のために送迎支援が有効と考えられる。山間部の地域においては、車依存の高齢者の行動群が類型化され、通院交通行動の支援やリモート診療の有効性が示された。
  • 日韓における中国人、日本人/韓国人、外国人に対する脅威との比較を通じて
    向井 智哉, 松木 祐馬, 金 信遇, 木村 真利子
    2020 年6 巻2 号 p. 159-165
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    近年日本を訪れたり日本に居住するムスリムの数は増加し続けている。それに対して、日本人がムスリムに対して持つイメージや態度は良好とはいえない。これまでの研究では、ムスリムに対する受容的態度やイメージにはムスリムが日本や地域社会にとってどの程度脅威になっているかという脅威認知が強い影響を及ぼすことが示されてきた。しかし、先行研究では脅威認知の構造は十分に明らかにされていない。そこで本研究では、ムスリムに対する脅威認知が日韓でどのような構造をとるかを、脅威認知を現実的脅威認知および象徴的脅威認知に区別して理論に取り込んだ統合脅威理論の観点から検討することを目的とする。また、この目的に際し、ムスリムに対する脅威認知がどのような特徴を有するかを検討するため、比較対象として中国人、日本人/韓国人、外国人に対する脅威認知も併せて検討した。409名の日本人および417名の韓国人から得られたデータを探索的因子分析によって検討したところ、脅威認知は統合脅威理論が想定するようには分かれないこと、脅威認知の構造はどの集団を評価対象とするかに応じて一定程度異なることが示された。結論として、脅威認知の構造は日韓においては統合脅威理論が想定するものとは異なるものであり、日韓の文脈にあったさらなる検討が必要であることが示唆された。
  • 路面電車南北接続による市民百年の夢の実現
    本田 信次
    2020 年6 巻2 号 p. 167-190
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    富山市では、本格的な人口減少社会の到来や急速な少子超高齢化の進行などを見据え、将来にわたって持続可能な都市構造への転換を実現するため、鉄軌道をはじめとする公共交通を活性化させ、その沿線に様々な都市機能が集積する「公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」を推進してきた。そのリーディングプロジェクトとして、平成18年4月の全国初の本格的LRTとなる「富山ライトレール」の開業、平成21年12月の市内電車の環状線化、平成27年3月の北陸新幹線開業にあわせた市内電車の富山駅への乗り入れ開始など、公共交通活性化施策を着実に実施してきた。そして、令和2年3月21日、富山市が進める「コンパクトなまちづくり」の一つの到達点である路面電車南北接続事業がここに完成し、市内に全長約15kmに及ぶLRTネットワークが形成され、路面電車の利便性が飛躍的に向上するとともに、明治41年以降、富山駅開業により南北に分断されてきた市街地の一体化が図られ市民百年の夢が実現した。本研究では、富山市のコンパクトなまちづくりの歴史的意義を考察するため、同市の近代化に向けたまちづくりを都市のレジリエンスという観点から、3つのステージに区分し、第1ステージ(都市計画黎明期の大土木工事と日本海側初の市電の開通)や第2ステージ(戦災復興とソーシャルキャピタル)で行われてきた明治以降の長年のまちづくりに支えられて、現在の第3ステージ(コンパクトなまちづくりによって実現された路面電車南北接続事業の完成)が実現できたことを明らかにする。
  • 清水 宏樹, 大橋 瑞生, 谷口 守
    2020 年6 巻2 号 p. 191-198
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    我が国では人口減少・少子高齢化の進行に伴い、空き家問題や商業施設の撤退、財政状況の悪化など、新たな都市問題が生じている。こうした中、少子高齢化や住宅の老朽化を包含した「都市の老い」と呼ばれる概念が近年整理され、都市の老いと地価形成に関する実証的分析などもなされている。本研究では都市の老いを地域政策のなかで実践的に評価できるようその定量化を図り、特性が類似した都市ごとに都市の老いと住宅地平均地価とがどのような経年的変遷を辿ったのかを、分かりやすい形で観察・提示することを目的とする。そのため、本研究では学術論文における様々な議論より都市問題の抽出を行うとともに、これらの代理指標に基づいて因子分析を行うことで、都市の老いを定量化した。さらに都市の老いと住宅地平均地価に関して、その変遷を都市特性に応じた類型に基づいて追跡を行っている。その結果、人口が集積する関東周辺においても老いが深刻な都市は多く、都市の老いという現象が喫緊の課題ということが明らかになった。また、全体の大きな流れとして都市の老いの進行が進むにつれて住宅地平均地価が下落する傾向があり、類型ごとに都市の老いと住宅地平均地価を観察すると、地方都市のみならず大都市郊外の都市でも、老いとともに地価の下落が生じており、大都市中心部とそれ以外の都市で地価に格差が生じていることが明らかとなった。
  • 搭載機能の違いが及ぼす活動間の比較
    御手洗 陽, 安藤 慎悟, 谷口 守
    2020 年6 巻2 号 p. 199-208
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    近年、完全自動運転の実現への期待の高まりとともに、それに付随した新たな交通サービスの検討が進められている。その一つに自動運転車両に都市機能を搭載し、無人で動きながら営業を行う機能搭載型自動運転車(ADVUS)が提案されており、購買や医療、食事や趣味の活動など、多様な活動を本サービスで代替して提供することが提案されている。本サービスの導入は、従来の自動車や自動運転車にあった「移動の道具」としての概念を超えて、「便利なサービスの提供手段」としての役割を担う可能性を秘める一方で、ADVUSを無制約に導入することにより、従来都市に立地していた施設との競合が発生し、施設の撤退が発生する恐れがある。これらの両面性を有する本サービスを理解するためには、本サービスへの選好やその差異、選好に影響する要因を明らかにする必要がある。そこで本研究では、独自に実施したwebアンケート調査を基に数量化Ⅱ類分析を行うことで、その利用意向にもたらす要因を分析するとともに、活動による差異について検討を行った。その結果、ADVUSに搭載する活動の違いにより、ADVUS・施設の選好に影響を与える要因は異なっており、「趣味活動」「知人との食事」では、施設との距離が近いほどADVUSの利用を好む傾向があるのに対し、「趣味商品」では、距離が近いほど既存施設の利用を好む傾向が見てとれるなど、ADVUS・施設の選択に対し、同じ要因でも正反対の影響を及ぼす場合が存在することが明らかになった。
  • 小倉 亜紗美, 岩本 みさ, 神田 佑亮, 河村 進一
    2020 年6 巻2 号 p. 209-220
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    近年日本で急増する外国人住民に対し、災害時にどのような方法でどのような情報を提供すればよいか明らかにすることを目的として、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)で甚大な被害を被った広島県の呉市、東広島市、福山市を対象に、平成30年7月豪雨の際の外国人住民に対する情報提供について、行政の外国人住民のサポートスタッフと日本語教室主催者にヒアリング調査、外国人住民にアンケート調査を行った。その結果、外国人住民は避難所の場所や避難の仕方、災害の状況について、日本語と同じ情報をスマートフォンの速報または身近な人を通じて、英語または「やさしい日本語」で発信して欲しいという要望を持っていることが明らかとなった。さらに、防災訓練の実施を望む声も確認された。これらの要望の実現には、平常時から多言語の情報発信のための文面の準備や人材確保などの準備をしておくことが重要であるが、ヒアリング調査を行った2つの市に共通して、非常時に外国人住民全員に情報を伝える手段が確立出来ていないという課題を抱えていることが明らかになった。そのため、まずは「やさしい日本語」の活用や外国人コミュニティと日頃から連絡を取るなど、外国人住民に情報伝達を行う方法を確立することが急務と言える。
  • 上村 祥代, 川本 義海
    2020 年6 巻2 号 p. 221-234
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    高レベル放射性廃棄物処分に関する対話活動は、特に将来を担う若年層に向けた工夫が必要である。しかし現在、原子力事業者によって行われる一般的な対話の場における情報提供は、参加者の特性に関わらず一様なものとなっており、対話の参加者の関心事とミスマッチが生じていると考えられる。本研究は、高レベル放射性廃棄物処分の問題に関する若年層に向けた対話の活性化に資することを目的として、大学生と一般人を対象とした2種類の異なる対話の記録を基に各々テキストマイニング分析を行い、本分析で得られた抽出語や抽出語間の共起ネットワークを比較考察することで、学生対話の特性からみた高レベル放射性廃棄物処分の問題を明らかにした。学生対話は、まず抽出語から、「対象者」、「先進国の事例」、「周知」に関する社会的側面、また「日本」における廃棄物の発生元の「原子力」や「国民」といった幅広い層を想定しHLW処分の「理解」についての思考があった。また抽出語の共起ネットワークから、例えば「原子力」では、「考え(方)」、「事故」の語、他の語にも連鎖したつながりがあること、さらに「地層」と「処分」の語では、HLW処分を進めることで間接的に影響する「雇用」、「メリット」の語や、参加者の知識レベルに応じた説明内容の程度に関する「理系」などの語とつながりがあった。そしてHLW処分問題、対話が発展する3つのパターンを特定した。これら知見は今後、学生の関心事に沿った対話を実践する一助になり得ると考える。
  • 西尾 敏和, 森田 哲夫, 塚田 伸也
    2020 年6 巻2 号 p. 235-243
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では、群馬県高崎市の中心市街地である高崎駅周辺における歩行者等通行量、公示地価と土地利用を比較検討することにより、関係性を考察することを目的とした。研究の進め方は、以下のとおりである。はじめに、高崎市中心市街地活性化基本計画に基づき、研究対象地点を設定した上で、高崎市の中心市街地の変遷・動向を述べた。次に、高崎駅周辺における歩行者等通行量の経年推移を把握した。その上で、高崎駅周辺における歩行者等通行量と土地利用、公示地価の関係性を把握するために考察を行った。以上の分析の結果、高崎駅周辺では、まちの商店街・個店が活性化していると考えた。特に、高崎駅周辺における歩行者等通行量を建築物用途、通り、アクセシビリティから捉えた際に、店舗兼事務所の有無、店舗兼住宅の有無、高崎市の中心市街地の中心となる連雀町交差点からの距離、高崎駅からの距離を考慮することが重要であると考えた。さらに、店舗兼事務所が公示地価の形成において、最も大きな影響を与えていることが考察できた。結論としては、高崎駅周辺における①歩行者等交通量と店舗兼事務所との関係、②公示地価と歩行者等交通量および店舗兼事務所との関係が定量的に明らかになった。
  • 岩本 一将, 西村 亮彦, 舟久保 敏
    2020 年6 巻2 号 p. 245-254
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究で着目する歴史的風致は、2008年に施行された歴史まちづくり法で新たに示され、無形の活動とその舞台となる有形の建造物及びその周辺環境を一体的に捉えることとして定義された概念である。2020年1月までにこの歴史まちづくり法に78市町が認定されており、第1期認定計画が終了して第2期へと移行する認定都市が現れ始めるなど、歴史的風致という新しい概念が多くの都市に浸透し、活用されていると捉えることができる。本研究では、認定都市の78市町へアンケート調査を実施し、歴史的風致を構成する要素を分析し、また各重点区域の成り立ちと歴史的風致の関係性を考察することで、歴史的風致の傾向と特徴を把握することを試みた。本研究における成果は以下の通りである。①歴史的風致645件を網羅的に分析した結果、「信仰に関わる行事(祭礼などの年中行事)」を無形の活動として、「神社」を有形の建造物、「活動ルートの範囲」をそれらに関する周辺環境と設定することが我が国の典型的な歴史的風致であることを示した。②「重点区域の核となる文化財」を活動場所の中心とする歴史的風致のみを分析した結果、「都市の成り立ち」別で異なる傾向を有することが明らかとなった。中でも、「城下町」を起源とする重点区域が最も多い割合を示し、また他の類型よりも多様な活動内容や重点区域の範囲の取り方がされていた。
  • 中山間地域における「人・農地プラン」の展開を手がかりに
    豊田 光世, 高島 徹, 北 愛子, 中川 克典
    2020 年6 巻2 号 p. 255-266
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    2012年にわが国で開始した人・農地プラン策定の取り組みは、地域の農業を担う中心的な経営体に農地を集積し、効率的・安定的な農業を推進することで農業の競争力強化を図る重要施策である。プラン策定の事例が多く報告されているものの、全国的に農地集積が十分に進んでいるとは言えないことから、農林水産省は「人・農地プランの実質化について」という通知を出し、プランの評価と再検討を求めた。そのなかで強調されているのが、地域での話し合いにもとづきプランを描くこと、すなわち合意形成のプロセスを組み込むことの重要性である。話し合いを通して地域の農業の見通しを立て、将来へとつながるプランを描くことが不可欠だとされている。しかしながら、農地の未来について話し合うことは、必ずしも容易ではない。どのように話し合いを進めていくべきか、すなわち「合意形成のプロセスデザイン」という観点からの考察が必要である。本稿では、人・農地プランをめぐって指摘されている問題点について、合意形成を軸に捉え直す。著者が新潟県佐渡市で進めた「里山未来会議」の事例をもとに、話し合いの障壁となる課題を抽出するとともに、課題を超えていくための視座を提示する。特に担い手の獲得が困難になっている中山間地域では、農地集積という目的に絞って人・農地プランの話し合いを進めていくことは難しい。話し合いを農村の未来を描くプロセスとして捉え、農家だけでなく非農家も参加できる話し合いの場を段階的にデザインしていくことが重要である。
  • 神戸市・福田川における環境保全の事例から
    高田 知紀, 山口 幸人, 山本 直人, 塚本 満朗
    2020 年6 巻2 号 p. 267-278
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、都市中小河川において多様な市民および地域組織の連携と協働により流域ガバナンスを実現するための知見を示すことである。そのために、地域で価値が共有されていない都市中小河川を対象として、市民プロジェクトを展開し、流域の包括的な環境保全を実現していった事例を詳細に分析する。対象事例は、神戸市・福田川流域において市民組織が主体となって実施している環境保全や環境教育、地域づくりの活動である。この事例の分析を通じて、ひとりの市民が川の清掃活動を始めたことをきっかけとして、市民組織が立ち上がり、さらに市民組織どうしが連携しながら、やがて行政、専門家も含めた流域内のゆるやかなネットワーク組織が形成されるまでの経緯をモデル化した。
  • 土橋 喜人, 大森 宣暁
    2020 年6 巻2 号 p. 279-290
    発行日: 2020年
    公開日: 2025/01/26
    ジャーナル フリー
    プロジェクトのPDCAについては、従来より提唱されてきた概念ではあるが、プロジェクト間のPDCAについて、実践の場での検証は十分にされてきていない。本論では、交通バリアフリーの調査を行った三事業(阪急電鉄伊丹駅、福岡市地下鉄七隈線、仙台市地下鉄東西線)について、プロジェクト内、同事業者間、プロジェクト間において、アクセシビリティについてのPDCAが回っているかを検証した。結果としては、それぞれにおいてPDCAのプロセスがあり、実践されていることがわかった。加えて、それらのPDCAが円滑にまわるためには、障害当事者団体間の情報共有や障害当事者団体から事業者への継続的な要望等がPDCAの後押しとなっていることもわかった。
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