抄録
本研究では、近年新たな公共交通の導入や中心市街地の再編を盛んに行っているフランスを対象として、それらの事業の合意形成のための制度の歴史と現状を述べるとともに、日本との比較も踏まえながらその意義と課題について考察する。 フランスにおける都市・交通政策の合意形成は、LRT整備等を対象として既にいくつかの論文や書籍において研究されている。本研究では、1980年代からの合意形成の関連法の変遷をまとめ、LRT整備計画を事例として2000年代の合意形成の法律の手順に沿った詳細な実施手法を解釈する。また近年の制度改正を踏まえた合意形成の実施方法の傾向を検討するために、人口15万人のアンジェ市での都市空間再編計画を事例として、2015年から2018年に合意形成の一環としてコンセルタシオン活動のプロセスで実施された、パブリックミーティングの実例とその特徴を明らかにする。その上で、現時点での合意形成の意義、今後の課題について考察する。我が国の都市計画の合意形成の改善に寄与できることも念頭において、フランスの自治体や首長の合意形成への対応の在り方についての解釈にも重点を置く。合意形成を通して、将来の都市の在り方を自治体と市民が協働して作り上げてゆく、フランスの具体的なプロセスと方法論を総括的に検討し、日本で政策を実行に移す際に参考になりうる知見を示す。