抄録
大阪城公園は有名な観光地である一方、市民にとっては緑の少ない都会の中の貴重な憩いの場となっている。大阪市は、世界的な歴史観光の拠点に相応しいサービスの提供や新たな魅力の創出を図るために、2015年度にこの大阪城公園にPMO事業を導入し、これ以降、大阪城公園では様々な商業施設が建設された。そして、大阪市はPMO事業を導入することにより、2019年度の収支はPMO事業導入前の2014年度と比べ約2億円改善したとしている。本研究では、PMO事業を導入することによる大阪城公園におけるこの約2億円の収支改善について検証した。その結果、大阪市がPMO事業導入後も、遊具改修費、園路改修費、転落防止柵改修費等の各種工事費を負担していることが先ず分かった。そしてこの種の工事費が、PMO事業導入前の2014年度の収支には含まれていたが、PMO事業導入後の2015年度以降の収支には含まれていないこと、つまり基準が異なる2つの収支を比較した結果が約2億円の収支改善であることが明らかになった。さらに、大阪市が台風被害復旧費や石垣公開事業費を負担したり、PMO事業者に対しコロナ禍損失補填を行ったりしたことも影響して、PMO事業を導入している2015年度から2020年度までの各種工事費等を含めた収支の合計は約–1.9億円となり、赤字であることも分かった。これらのことから、PMO事業を導入した公園においては、公共資産の価値向上の観点から、共通の基準に基づいた数値を用いて正しい評価を行い、その結果を公園施策に活かす必要があると考える。