抄録
環軸関節回旋位固定は,環軸椎間で回旋位の固定が起こり頸部痛や斜頸を生じる病態であるが,
頸椎の関節炎が原因の報告はまれである.環軸関節回旋位固定が初発症状の場合,若年性特発性
関節炎(juvenile idiopathic arthritis:JIA)を鑑別にあげることは非常に困難である.今回我々は環
軸関節回旋位固定の治療中に他関節の関節炎を認め,リウマトイド因子(rheumatoid factor:RF)
陽性多関節型JIAと付着部炎関連関節炎(enthesitis related arthritis:ERA)と診断した症例を経験
した.このようなJIAの初発症状が環軸関節回旋位固定であった症例報告は,付着部炎が主体の脊
椎関節炎(spondyloarthritis:SpA)以外には検索する限りない.SpAではTNF(tumor necrosis
factor),IL-17,IL-23といったサイトカインの関与がその病態生理として考えられており,これ
までの様々な臨床研究から抗IL-6阻害薬よりもTNF阻害薬の有効性が示されている.付着部炎だ
けでなく滑膜炎が主体のJIAの脊椎病変にも,TNF阻害薬がより有用である可能性がある.