抄録
高安動脈炎は若年女性に好発する非特異的大型血管炎であり,本症合併妊娠では子癇を含めた高血
圧症,心不全,大動脈瘤解離,脳内出血,胎児の自然流産,子宮内発育遅延,早産などが報告されて
いるが,症例数が少ないため周産期の管理方針にっいてのガイドラインはない.今回の症例は28歳
の女性で,診断までに12年経過し弓部大動脈分枝の閉塞や高度狭窄を認めた高安動脈炎患者であり
高血圧の合併はみられなかった.病勢が安定した時点で妊娠を許可し疾患活動性および血圧の管理を
厳格に行ったところ,分娩前後の問題は生じなかった.児は早産であったが成長障害など他の異常は
なく,分娩14日後に母児ともに退院した.以上より,高安動脈炎合併妊娠では妊娠後期の血圧上昇
や疾患活動性の上昇が予後不良因子となるため,臓器障害の評価とあわせ可能な限り炎症を抑制した
状態で計画妊娠を勧め,他科との協力の下全経過を通じて血圧の管理が重要であると考えられる.