小児リウマチ
Online ISSN : 2434-608X
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3 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 山口 賢一, 岡田 正人
    2010 年3 巻2 号 p. 43-46
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
    小児リウマチ性疾患に合併する肺動脈性肺高血圧症は,生命予後を左右する重要な合併症であ るにもかかわらず,診断が遅れがちになる.高リスクと考えられる症例では系統だったスクリーニン グ検査を実施し,早期に診断を確定し適切なタイミングで治療介入が開始されることが望まれる.
  • スプラット 智恵美, 金城 紀子
    2010 年3 巻2 号 p. 47-52
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
    若年性皮膚筋炎(JDM)は血管炎による横紋筋のびまん性炎症や皮膚の非化膿性炎症を特徴とする. 皮膚症状を伴わない多発性筋炎(PM)は小児ではまれである.今回, JDM 13例とPM 2例について, その臨床像を後方視的に検討した.性別は,男児8例,女児7例であった.発症年齢は2か月~11 歳11か月であった.初発症状は紅斑や筋症状が多く認められた.初期治療は経ロステロイド療法が 3例,ステロイド・パルス療法が11例であった.5例で大量γグロブリン療法やメソトレキセート少 量パルス療法を併用した.合併症は,3例で皮膚石灰化,1例に中枢神経症状,2例に内分泌学的異常 を認め,そのうち1例は小腸潰瘍を伴い劇症型が疑われた.2例は初発時からKL-6の上昇を伴う間質 性肺炎を合併していた.劇症型と乳児期発症例ではステロイド減量が困難であり,種々の免疫抑制剤 の併用療法を行ったが疾患コントロールに難渋した.若年性皮膚筋炎の臨床病態は軽症から重症まで スペクトラムが広く,その病態に応じた治療の選択が必要であった.
  • 岡本 奈美, 村田 卓士, 謝花 幸祐, 玉城 裕史, 玉井 浩
    2010 年3 巻2 号 p. 53-57
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
     健常小児において,感染症罹患後に一過性に循環抗凝固因子が出現することが知られている.多く は無症状で,出血・血栓症状を有する者もほとんどが自然軽快するが,ときに治療を必要とする重症 例も存在する.循環抗凝固因子は抗リン脂質抗体症候群において血栓傾向の原因となるが,小児の一 過性循環抗凝固因子陽1生者においては,出血症状のほうが多い.過去の報告において,急性期に凝固 因子活性の低下や低補体価を合併することがいわれているが,異常値に一定の傾向はなくその病態につ いても不明な点は多い.今回われわれは出血症状で発症しみつかった循環抗凝固因子陽性の3症例を報 告する.症例1,2歳男児,LAC・抗カルジオリピン抗体陽【生,第VIII・IX凝固因子活性低下.症例2,2 歳女児,LAC・抗カルジオリピン抗体陽性,第IX凝固因子活性低下.症例3,4歳女児, LAC陽性,第 IX凝固因子活性低下.いずれも低補体価を認めたが自己抗体は陰性で,経過観察のみで臨床症状は消 失した.症例2と3では検査結果も改善を認めた.また,症例1では低補体価はcold activationであった.
  • 清水 正樹, 中岸 保, 笠井 和子, 山崎 雄一, 三好 麻里, 武井 修治, 谷内江 昭宏
    2010 年3 巻2 号 p. 58-62
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
    Tocilizumab(TCZ)の導入により,難治性の全身型若年性特発性関節炎(s-JIA)の多くの症例で劇 的な効果が認められている一方で,一部の症例では,治療中にマクロファージ活性化症候群(MAS) を合併することが明らかになった.われわれが経験したTCZ治療中にMASを合併した5症例では, MAS合併時においても,臨床症状に乏しく,CRPも上昇しなかった.一方,全症例とも血清IL-18は MAS合併時に10,000 pg/mL以上の異常高値を示し, MAS発症前より増加を認めていた.これらの結 果から,血清IL-18はTCZ治療中においても, s-JIAの疾患活動性を示す有用な指標であると思われ た.TCZ治療中は臨床症状がマスクされ,再燃やMASへの移行の診断が困難になることが予想され, IL-18を含めた活動性の指標による慎重なモニタリングを行う必要がある.
  • 廣瀬 あかね, 河島 尚志, 酒井 詠子, 呉 宗憲, 佐藤 智, 西亦 繁雄, 柏木 保代, 武隈 孝治, 星加 明徳, 永井 毅
    2010 年3 巻2 号 p. 63-66
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
    亜急性壊死性リンパ節炎では,組織球とマクロファージの過剰反応とそれに伴うサイトカインによ り壊死が起きていると推察されているが,小児において詳細に検討した報告は少ない.今回,小児領 域における同疾患の病態を知るため,血清中のサイトカインプロファイリングと組織中の免疫染色を 行った.さらに,血清中のサイトカインプロファイリングではSLEとの比較も行った.血清中IL-6, IFN-γ, MIP-1β とTNF-αは相対的に高値であった.SLEとの比較では,サイトカインプロファイリ ングに差はなかった.免疫染色では,細胞障害性T細胞による炎症と考えられた.IFN-γの著明な上 昇やリンパ節切除により一部の患者では寛解することなどから,何らかの微生物の持続感染とそれに 引き続くケモカインの誘導ならびに好中球の誘導が起きないことが病態を形成したと推察された.ま たSLEとサイトカインプロファイリングに差は認めないことより,治療寛解後も長期の観察が必要で あることが示唆される.
  • 吉松 豊, 加納 友環, 宮嶋 文香, 菅 晴香, 村上 佳津美, 森口 直彦
    2010 年3 巻2 号 p. 67-71
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
    われわれは,視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)に全身型若年性特発性関節炎(systemic juvenile idiopathic arthritis:s-JIA)を合併した症例を経験した.症例は,10歳時に左視神経炎で発症し, 以後視神経炎,脊髄炎の再発を繰り返した.14歳時に測定した抗アクアポリン4抗体(抗AQP4抗体) が陽性であり,NMOと診断した.以降外来で経過観察していたが,16歳時に両手指,左膝関節痛を 訴え,弛張熱も続き入院した.入院後,腹部や大腿に不定形の紅斑も認めた.血液検査は,自己抗体 では抗核抗体320倍以外すべて陰性,右手指のMRIで関節炎の所見があり,経過からsJIAと診断し た.マクロファージ活性化症候群を合併し,パルミチン酸デキサメサゾンとCyAの併用で改善した. 16歳9カ月時にs-JIAの再燃がみられ,現在,トシリズマブで加療中である.NMOにs-JIAを合併し た症例はみあたらず,まれな症例と考えられたので報告する.
  • 国島 知子, 金城紀子 紀子
    2010 年3 巻2 号 p. 72-76
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は7歳男児.剣道練習中に右足首を捻挫した.免荷療法を施行されたが,両足関節の腫脹と察 痛に進展し,受傷6か月後の造影MRIで滑膜の増殖と軟骨破壊を認め, MMP-3が高値であり,若年 性特発性関節炎(JIA)少関節型と診断された.受傷9か月後からメトトレキサート(MTX)少量パルス 療法を開始したが,松葉杖なしでは歩行が困難となった.関節裂隙の狭小化の進行,MMP-3高値の持 続に加え,RF陰性にもかかわらず抗CCP抗体の異常高値を認めた.受傷1年7か月後よりトシリズ マブの投与を開始したところ,CRP, ESR, MMP-3が正常化し,関節裂隙の狭小化が著しく改善した. トシリズマブ以外の治療を中止でき,日常生活の制限はなくなった.  JIAの関節予後の予測因子として抗CCP抗体の値が有用となり得ることが示唆された.また,トシ リズマブは関節型JIA患者の骨・軟骨破壊を抑制して,罹患関節の構造的寛解をももたらす可能性が あると考えられた.
  • 黒岩 京子, 重村 倫成, 小林 法元, 小池 健一, 右田 清, 上松 一永
    2010 年3 巻2 号 p. 77-80
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
    家族性地中海熱(familial Mediterranean fever:FMF)典型例は,発熱時に随伴症状として,激しい腹 痛や胸背部痛を伴う.また,一部に関節炎を伴うが,その詳細は不明であり,十分な検討はなされて いない.遷延した関節炎の検討を行った.25歳,女性.幼児期から腹痛・胸痛を伴う発熱を認め,発 熱時には数日以内に改善する膝関節炎や足関節炎がときどきみられた.FMFの責任遺伝子MEFVの解 析では変異(M6941/M6941)を有しFMFと診断した.コルヒチン内服開始後に症状は消失したが,その 後も軽度の発作がみられた.今回,右膝関節の著明な腫脹と頭痛が出現した.関節液穿刺では,関節 液は黄色で混濁が著明であり,好中球主体の細胞増多がみられた.膝関節MRIは軽度の滑膜肥厚と関 節液貯留を認めたが,骨破壊はなかった.治療はコルヒチン内服継続のみで経過をみたが,その後, 足関節に丹毒様皮疹を伴う関節炎が生じ,全経過約3か月で自然消退した.多関節型の若年性特発性 関節炎や関節リウマチの関節液は,T細胞が多く含まれるのに対し,リンパ球はみられず好中球が主 体であった.FMFの関節炎では骨破壊が起きにくい原因として,症状が自然消退することに加え,炎 症の主因が好中球の活性化によるためと考えられた.
  • 山口 賢一
    2010 年3 巻2 号 p. 81-84
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
    日本では若年性乾癬性関節炎はまれとされるが,過小評価されている可能性がある.14歳でアキレ ス腱痛と趾の腫脹で発症し,診断まで5年間を要した若年性乾癬性関節炎の一例を当科で経験した. 早期診断に役立つと思われるポイントについて文献的考察を加えて検討した.
  • 重盛 朋子, 伊藤 保彦, 五十嵐 徹, 安藝 薫, 柳原 剛, 清水 章, 福永 慶隆
    2010 年3 巻2 号 p. 85-88
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
    Tubulointerstitial nephritis and uveitis (TINU)症候群は1975年に初めて報告された,ぶどう膜炎 を伴う尿細管間質性腎炎であり,わが国でも1977年の報告以来注目されている症候群の1つであり, 現在まで200例以上の報告がある.今回,ぶどう膜炎を契機に間質性腎炎と診断したTINU症候群の 1例を経験したので報告する.  患児は15歳女子,ぶどう膜炎の診断後,血液,尿検査にて腎機能障害が認められ,腎生検にて間 質への高度の炎症細胞浸潤,尿細管の萎縮所見より尿細管問質性腎炎と診断された.  ステロイドパルス療法を施行し,尿中β2MGは,治療開始後速やかに改善がみられ,約6か月後 に再度腎生検を施行したところ,間質への炎症細胞浸潤は消退し,間質の線維化が認められた.  本症例は,眼科的な自覚症状は認めたものの,全身症状は非特異的なものであり,臨床検査によっ て初めて腎機能障害の存在が認められた,臨床症状に乏しい症例においても,間質性腎炎の程度はさ まざま存在しており,適切な診断,早期の治療開始が必要である.  また,TINU症候群はステロイド療法への反応は良好であるが,ぶどう膜炎の再発は多く,間質性 腎炎についても,腎組織に炎症細胞浸潤が残存し腎機能の予後に影響する報告例もあるため,治療後 の評価についても十分な注意が必要である.
  • 小林 達雄, 岸本 暢将, 吉田 和樹, 押川 英仁, 木村 万希子, 松井 和生
    2010 年3 巻2 号 p. 89-92
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
    16歳女子.主訴は多関節痛,微熱.12歳時から多関節痛が出現.13歳時に,JIA少関節型の診断 にてMTX, PSL 5 mg/日開始.その後,微熱や関節炎を繰り返し,16歳時に当科紹介受診. HLA-B51 陽性であり,不全型Behcet病による関節炎も疑われ,コルヒチン・ナプロキセンを開始し, PSL 10mg/日に増量とし, MTXは中止とした.関節炎は軽快傾向を示したが,4か月後に腹痛・下痢が出 現.幼少時から口内炎は頻繁に認めていた.家族歴なし.口腔内アフタと右上腹部圧痛,多関節炎の 所見と腱付着部炎あり.陰部潰瘍や皮疹・眼病変なし.炎症反応上昇あり.大腸内視鏡にて,回盲部 に多発潰瘍あり,腸管型Behcet病と診断.PSL20mg/日,メサラジン3g/日で治療. 症状・炎症反 応は改善し退院.【考察】多関節炎が先行した腸管Behcet病を経験した.小児期の多関節炎の鑑別に Behcet病も考慮し,消化器症状の際は内視鏡検査などの精査を迅速に行うことが肝要と思われた.
  • 太田 和秀, 千田 裕美, 井上 巳香, 水野 和徳, 酒詰 忍, 林 美里, 吉村 光弘, 横山 忠史, 清水 正樹, 谷内江 昭宏
    2010 年3 巻2 号 p. 93-97
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
    症例は,2005年4月発症の全身|生エリテマトーデス(SLE)の15歳女子である.腎組織は,当初か らISN/RPS分類:IV-G(A)と重症であった.前医にて,経ロステロイド剤,メチルプレドニゾロン・ パルス療法,シクロホスファミド・パルス療法,免疫抑制剤(ミゾリビンおよびシクロスポリン)など にて治療が施行されていた.しかし,腎炎は軽快することなくネフローゼ状態が持続し,軽度の腎機 能低下も呈するようになってきたため長期管理を目的に2007年10月から当院に転院となった.なお, 本人は寡黙で,かつ閉鎖的な性格であった.転院後,血液データーなどから怠薬を疑いつつも病状が 安定していたため半信半疑のまま管理していた.ところが,2008年秋から急激に増悪し治療のかいな く慢性腎不全となってしまった.原因は,やはり怠薬であった.思春期のSLEの患児特に女児を管理 する難しさを改めて痛感した.思春期に増悪するSLE患者の半数は,怠薬によるとの報告もあり,早期 に怠葉と断定し入院管理するとともに,カウンセリングなどを早期から導入すべきだったと反省させられた.
  • 中野 直子
    2010 年3 巻2 号 p. 99-103
    発行日: 2010年
    公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー
    高安動脈炎は若年女性に好発する非特異的大型血管炎であり,本症合併妊娠では子癇を含めた高血 圧症,心不全,大動脈瘤解離,脳内出血,胎児の自然流産,子宮内発育遅延,早産などが報告されて いるが,症例数が少ないため周産期の管理方針にっいてのガイドラインはない.今回の症例は28歳 の女性で,診断までに12年経過し弓部大動脈分枝の閉塞や高度狭窄を認めた高安動脈炎患者であり 高血圧の合併はみられなかった.病勢が安定した時点で妊娠を許可し疾患活動性および血圧の管理を 厳格に行ったところ,分娩前後の問題は生じなかった.児は早産であったが成長障害など他の異常は なく,分娩14日後に母児ともに退院した.以上より,高安動脈炎合併妊娠では妊娠後期の血圧上昇 や疾患活動性の上昇が予後不良因子となるため,臓器障害の評価とあわせ可能な限り炎症を抑制した 状態で計画妊娠を勧め,他科との協力の下全経過を通じて血圧の管理が重要であると考えられる.
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