2025 年 161 巻 p. 28-50
本稿では,解雇規制がマクロ経済にもたらす影響について考察する。まず,解雇規制のマクロ経済インパクトに関する既存研究について,(1)企業間の労働配分,(2)非正規雇用比率,(3)労働者の人的資本形成,(4)イノベーションと経済成長,の4 つの研究テーマに分けてレビューする。続いて,標準的な企業動学マクロモデルを用いて,日本経済に合わせてパラメータを設定したうえで,いくつかの定量分析を行った。マクロモデルを用いた政策分析からは,解雇規制の緩和が,企業間の労働配分を効率化するとともに,非正規雇用比率の低下を促すことで,経済全体の労働生産性の改善と,賃金,生産,社会厚生の上昇をもたらすことが示された。さらに,正社員の解雇規制を温存したまま非正規雇用の拡大を促す「部分的な労働市場改革」を実施した場合,企業が,社会的に望ましい水準よりも多くの非正規雇用を用いる結果,社会厚生の観点から望ましくない結果を生む可能性が示唆された。