霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: P-85
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ポスター発表
チンパンジーの唾液採取法の検討
*寺本 研森 裕介長野 邦寿早坂 郁夫本間 誠次郎池田 功毅山本 ライン石田 貴文吉川 泰弘長谷川 寿一
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抄録
唾液中の生理データは、糞尿と比較して血中の生理活性値をよく反映するため、近年、注目を浴びている。また、唾液は、ストレスを与えることなく、繰り返し採取を行うこができる利点があり譁@を確立することが重要となってきている。しかし、チンパンジーの唾液採取法について検討された文献はほとんどない。今回、成獣雄チンパンジー17個体に対して、以下の3方法により唾液採取を試みたので紹介する。
採取法:1) 注射筒にチューブを装着し、その先端に付けた粉末ジュースを舐めさせ、唾液を採取する。2) ジュースを染み込ませ、乾燥させたガーゼを2枚のアクリル板に挟み込み、アクリル板に開けた穴より、ガーゼを舐めさせることにより唾液を採取する。3) ジュースを染み込ませ、乾燥させたロープ(クレモナ)を噛ませることにより、唾液を採取する。
結果:注射筒、ガーゼ、ロープを用いる採取法で、それぞれ0.1~10.0ml/回(10分以内)、0.5~1.0ml/回(15分以内)、2.0ml以上/回(15分以内)の唾液を採取できた。また、これらの方法を用いた2ケ月間の訓練で、17個体中13個体 (76.5%) に対して、継続的な唾液採取が可能となった。
考察:今回の結果より、チンパンジーにおいてもホルモン測定に必要な唾液が十分採取できることが確認された。3方法の比較では、採取量の確認、採取後の処理の簡便さという点において、1) 注射筒を用いた方法が有用であった。また、特別な訓練の必要がないことuの簡便さ及び同時に多個体の採取が可能な点において、3) ロープを使用した採取法が有用であると思われる。
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© 2004 日本霊長類学会
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