霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: A-19
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口頭発表
すべての雄が居残る社会
杉山 幸丸
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抄録
集団生活をする多くの哺乳類では雌が生涯を通じて出生集団に残り、雄が生まれた集団を離れて分散し別の集団に入る、female philopatryで知られている。その他では、雄雌とも出生集団を離れて他集団に入るboth-sexes dispersalもある。単独生活をする種でも、雌は母親の近くに定住し、雄は遠くに去るのが普通である。これに対して野生チンパンジーは、すべての雄が出生集団に居残り、雌が他の集団に移籍するall-male philopatryだと言われている。したがって雄が見つからなくなれば、即、死亡とされてきた(例えば、Boesch & Boesch-Achermann, 2000)。それにも関わらず、これまでに知られた多くの野生チンパンジー集団で、成熟雄/雌の比率は0.5またはそれ以下で、雄の数は圧倒的に少ない。その理由として、雄は赤ん坊の頃に子殺しに会う頻度が高い、一般に雄の死亡率は雌より高い、等と説明されてきた。しかし、子殺しはどの集団でも一般的とは言えない。また、成熟前の死亡率の性差に関する資料は、必ずしもこれを支持しない。一方、多くの人間社会と同様、チンパンジーは集団を雄が継承する父系社会であることから、人間とチンパンジーの共通祖先も父系社会だったと言われてきた(伊谷, 1985; Wrangham, 1987; Pusey, 2001)。しかし、私の知る限りall-male philopatryの人間社会は存在しない。集団を雄が継承するという点では共通でも、両者は根本的に異なるのである。ヒトをふくめた哺乳類社会としては極めて異例なall-male philopatryはなぜ出現したのか。これがチンパンジーの本性と言えるのか。なぜ多くの霊長類種と異なるのか考えたい。
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© 2004 日本霊長類学会
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