抄録
高齢社会となり、緑内障、白内障、糖尿病網膜症など視野の喪失を伴うさまざまな疾患が問題となっている。失明を未然に防ぐことは、患者のQOLの向上につながる。こうした疾患の中でも特に緑内障のような神経変性疾患の場合、「早期発見、早期治療」が失明を防ぐために不可欠である。こうした視野の喪失を伴う疾患の研究に、モデルとしてマカクザル等が使用されている。昼行性で色覚を含めたさまざまな視機能がヒトと近いサルを用いたモデル動物の確立が望まれる一方で、サルの視野を正確に計測し、ヒトとの比較を行った研究はこれまでにほとんどない。本研究では、4頭のカニクイザルと3人のヒトの視野を同じシステムで計測し、比較した。オペラント条件付けの手法を用い、PCで作成した視覚刺激をCRT上に提示して視野計測を行った。視覚刺激提示条件は、臨床で用いられているHumphrey Field Analyzerにならった。方法としては、サルが正しく視覚指標を検出できれば、背景に対する視覚指標の輝度対比(luminance contrast)を一段階(1 dB)落とし、正しく検出できなければ輝度対比を一段階上げるという「上下法」を用いて、輝度対比の閾値を計測した。その結果、1)サルはヒトと非常に似た輝度対比(luminance contrast)に対する感度を示すこと、2)しかし、ヒトの感度の方が全般的に良く、特に周辺部においてその差が顕著になること、などが明らかになった。今後さらに多くのサルの視野データを集めて、各年齢における健常サルの視野データベースが作成できれば、ヒトとサルの視野の特徴や相違点が明らかになり、眼疾患に関してもサルは非常に有用なモデル動物となりうる。