霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: A-9
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口頭発表
ニホンザルにおける母子の共同注視がシラミ卵取りの発達に及ぼす効果
田中 伊知郎
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抄録
ニホンザルは、毛づくろい中にシラミ卵をつまみ上げ食べる。昨年度までの結果から、シラミ卵取り行動の発達は段階的だとわかった。そこで、シラミ卵処理行動の発達に対する、母親などの他個体の影響の解明を目的に、長野県志賀高原地獄谷野猿公苑において、ビデオを用いた個体追跡法によりニホンザルを調査した。シラミ卵処理行動のように何かをつまみ上げるときに、母親が手を出して、母子間の相互交渉となる事例が観察された。このとき、コドモがつまんだ指をゆるめることがあった。シラミ卵処理中はふだん指をつまんでおり、中身が見えないが、コドモがつまみをゆるめると「何を把握しているか」の中身が母親にも見えるようになる。 さらに、共同注視後の母親の行動が、その後のコドモの行動決定に影響していた。この指をゆるめることから結果的に生じた視覚的共同注意が段階的発達の直前に出現した。この時間的近接性および行動決定への効果から、共同注視が母子間での情報共有を促進したと示唆された。把握を伴った共同注視は、離れた物体に対する共同注視よりも、対象物体を特定しやすいと考えられる。以上から、把握をゆるめることで生じる共同注視が、人類に至る霊長類における社会学習の進化で大きな役割を果たしていると考えられる。
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© 2004 日本霊長類学会
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