霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: A-04
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口頭発表
勝山ニホンザル集団における母ザルの子ザルに対する視覚的探索行動
*大西 賢治山田 一憲中道 正之南 徹弘日野林 俊彦
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抄録
ヒト以外の霊長類の母子関係に関するこれまでの研究では、母ザルから離れている子ザルに対して母ザルが示す行動についてはほとんど研究されていない。母子が離れた状況下では母ザルは子ザルをすぐには保護できないため、母ザルの子ザルに対する視覚的探索行動は母子が離れた場面での養育行動において重要な役割を持つと考えられる。本研究では、母ザルの「子ザルに対する視覚的探索行動」がどのような状況で生起し、どのような機能を持つのかを検討した。
 勝山ニホンザル集団において、0歳齢の子ザルを持つ母ザル8頭を対象として、個体追跡法により子ザルが生後7∼ 16週齢までの期間に観察を行った。母ザルが目を開いた状態で、頭の動きによって視線の方向を変え、子ザルの方向に頭の動きを停止させる行動を「子ザルに対する視覚的探索行動」と定義し、記録した。さらに、母子間の距離や母ザルの活動状態、母ザルの子ザルに対する制限行動、回収行動、拒否的行動などの行動も記録した。
 母子が離れた場面では、母子が接触した場面に比べて母ザルは子ザルに対する視覚的探索行動を頻繁に行なっていた。また、母子間の距離が大きくなるほど、母ザルは子ザルに対する視覚的探索行動をより頻繁に行っていた。子ザルの週齢が上がるにつれて、母子が接触していない時の母ザルによる子ザルへの視覚的探索行動の頻度が減少した。これらの結果から、母ザルは母子間の距離や子ザルの発達段階に応じて視覚情報を取り入れる頻度を変化させていると考えられる。さらに、母ザルが子ザルを回収する行動の多くが母ザルの子ザルに対する視覚的探索行動の後に生起した。この結果から、多くの場合母ザルは取り入れた視覚情報から回収行動が必要であるかを決定し、母ザルの視覚的探索行動には子ザルの安全を確認する機能があると考えられる。
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© 2005 日本霊長類学会
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