抄録
(目的)人類の祖先は進化の過程のどこかで、森林からサバンナに進出した。森林に比べて過酷なサバンナでの生活は、人類の祖先に二足歩行の完成や、マニュピレーションの発達をうながしたと考えられる。サバンナでの生活をしることは、ホミニゼーションの過程を明らかにする上で重要である。本研究は、サバンナ環境に適応しているヒヒの遊動行動を明らかにする目的で、ケニア共和国(36°50'E, 0°15'N)に生息する野生アヌビスヒヒについて、集団サイズ、遊動行動に与える季節性と年変化、遊動にともなう群れ間関係について報告する。
(方法)複数の観察者によって、複数の群れを追跡し、GPSを用いて位置計測をおこなった。また、群間の親和的、敵対的交渉の記録、採食食物の記録もおこなった。
(結果)遊動ルートは水場をつなぐように、あるいは水場を中心に決定されていた。
遊動には、季節変化があった。また、すくなからず年変化もみられた。とまり場は複数の群れが共有していた。
(考察)資源が限られている場合、その資源の利用には排他的に占有する、共有するという2つが考えられる。ヒヒでは、群れは一般に排他的だが、とまり場は複数の群れで共有されていた。そこには、限られた資源を共有するルールがあることを示唆する。今後、どのような方法で共有が可能になっているのかについて、より仔細な調査が必要である。