霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: B-21
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口頭発表
コンゴ民主共和国ジョル地区周辺の野生ピグミーチンパンジーの現状
*五百部 裕ンドゥンダ ムワンザ
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抄録

(目的)野生ピグミーチンパンジー(Pan paniscus)は、コンゴ民主共和国(旧ザイール共和国)のみに生息している。彼らの野外研究は1970年代から本格的に行われてきた。しかし1990年代半ばより、この国の政情が悪化し、ピグミーチンパンジーの野外研究は中断を余儀なくされた。こうした中、2003年に休戦協定が結ばれ、国内の情勢は落ち着きを取り戻しつつある。一方こうした不安定な政治状況下でピグミーチンパンジーの密猟は増加していると推測されており、個体数の減少が危惧されている。そこでこの研究では、長期継続調査が行われてきたワンバ村を含むジョル地区周辺で現地調査を行い、野生ピグミーチンパンジーの現状を把握することを目的として行った。
(方法)2004年8月に現地調査を行った。この調査は、ワンバ村を出発点とし、ジョル、リンゴモ、モンポノ、ベフォリといった町や村をバイクで回り、ワンバ村に帰るという行程で行った。そして途中の村でピグミーチンパンジーの生息状況や村人の森林利用についての聞き込み調査を行った。
(結果と考察)聞き込みを行ったすべての地域でピグミーチンパンジーは食用に供されており、ワンバ村のように伝統的にピグミーチンパンジーを食べない習慣を持つ村は存在していなかった。そして、調査地域内のほとんどの場所で、内戦前に比べ、ピグミーチンパンジーの個体数は減少している可能性が高いことが明らかになった。
 一方、リンゴモとモンポノの間のロマコ川周辺とドゥアレ川とヤンボヨ村の間の二つの地域に、人手のあまり入っていない大きな森林ブロックが残っていることが明らかになった。そしてこれらの森林ブロック周辺の住民に対する聞き込み調査から、これらの地域のピグミーチンパンジーの生息状況は、他の調査地域に比べ良好であると推察された。

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© 2005 日本霊長類学会
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