霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: P-08
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ポスター発表
チンパンジーの服従的挨拶、パントグラントは何故に大声となるか?
*坂巻 哲也
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抄録

チンパンジー社会には、パントグラントと呼ばれる服従的発声によって知ることができる基本的な優劣関係(formal dominance)が存在し、オトナオスは同じ集団のメスやコドモからパントグラントを受ける。パントグラントは、複数のオスとメスが平和的に共存するために日々繰り返される挨拶行動と考えられている。本研究は、パントグラントが大声で交わされることの社会的意味を検討した。調査は、1999∼2000年の約1年間、タンザニアのマハレ山塊国立公園のチンパンジーを対象におこない、オトナメスがオトナオスと出会う場面のパントグラントを調べた。その結果、メスが複数のオスと出会う場面では、メスはすべてのオスにパントグラントを発するのではなく、その相手は主にアルファオスだった。また、パントグラントが起こる出会いは、一日の遊動生活の中で、休息後の移動時に頻繁だった。メスは最も優位なアルファオスと大声になるパントグラント交渉を持つことで、多くの個体とその場の社会的状況に関する認識が共有され、同一集団での共存が促進されることが示唆された。パントグラントの特徴ある発声には、交渉が起こったことを他個体に知らせる宣伝の効果があると考えられる。

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© 2005 日本霊長類学会
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