抄録
霊長類の種によって、毛づくろいのかき分けに用いる体の部位やかき分けの間隔に差があるか調べた。ニホンザル(9ペア、1997年10月、京都市、嵐山モンキーパークいわたやま)、チンパンジー(6ペア、1999年8-10月、2004年6月、タンザニア、マハレ山塊国立公園)、ヒト(2ペア、2000年7月、タンザニア、カトゥンビ)がおこなった他個体への毛づくろいをビデオに記録し、両手を用いたかき分けの動作を分析した。かき分けにニホンザルは手のひらや指全体を用いていたのに対し、ヒトは第1指と第2指を、チンパンジーでは第1指、第2指、指全体のほかに下唇を用いていた。かき分け間隔の平均値は、ニホンザルで0.55秒(range:0.30-0.76)だったのに対し、チンパンジーで1.34秒(range:1.02-1.47)と長く、ヒトは0.63秒と0.60秒で、ニホンザルのかき分け間隔に近い値を示した。1回のかき分け間隔は、ニホンザルで2.6秒以下、ヒトで2.5秒以下だったのに対し、チンパンジーでは3秒以上の長いかき分けがみられた。以上から、ニホンザルとヒトが、手の一部を偏って使って、短い間隔でかき分けているのに比べて、チンパンジーでは手や唇をさまざまに使って、より長いかき分けをしていることがあきらかになった。ニホンザルは毛の密度が高く、またタンザニアのヒトの髪は巻いており、1回のかき分けで狭い範囲しか外部寄生虫を探索できないのに対し、チンパンジーは毛が粗く広範囲を探索できるため、時間をかけていると考えられた。またニホンザルやヒトのかき分けでは、探索だけでなく、毛を押さえるための、ごく短いかき分けがあると考えられた。またその他の種のサルの資料をあわせて、かき分け間隔と体サイズの関係を比較する。