霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: P-10
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ポスター発表
罠を壊すチンパンジー
*大橋 岳
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抄録
(目的)アフリカにおいてブッシュミートはいまだ珍重されており、チンパンジーの生息域にも多くの罠が設置されている。罠のターゲットとして想定されていなくても、実際にはそこを利用する動物たちに無差別にダメージを与える可能性がある。最近になり、チンパンジーにおいても約20%の個体が何らかの被害を受けている群れの存在や、罠の被害が死につながった例が報告されてきた。一方、29年におよぶ長期調査がおこなわれてきたギニアのボッソウでは、罠によって怪我をした個体の報告が1例(Matsuzawa, 1994)あるが、致命的な怪我を負ったチンパンジーの例はない。ヒトとチンパンジーの生活圏が極めて近く、現実に保護区に多数の罠が設置されているボッソウの状況を考えれば、チンパンジーがどのように被害を回避してきたのか疑問が残る。
(方法)チンパンジーを追跡しているさい、実際に罠の付近を通過することがある。そのとき、対象個体と同じパーティにいるチンパンジーがどのように振舞うのかを逐次記録した。調査期間は2002年から2004年までの延べ15ヶ月間である。
(結果)通過する近辺のものに対して、罠に触れて壊そうとする行動を6例観察した。そのうち2例は実際に罠を不活性化させることに成功した。このような行動はコドモからオトナまで、5個体のオス個体にみられた。まわりにいるにもかかわらずメスの積極的な行動は観察されなかった。
(考察)罠に対する積極的な行動をおこすことによって、事前に罠を不活性化できるだけでなく、罠を壊せなくても周辺個体の注意を喚起することもできるだろう。このことがボッソウでの罠の被害回避に貢献しているにちがいない。このような行動が複数個体、しかもコドモにおいてもみられることから、罠への振る舞いが世代を超えて定着していると考えられる。
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© 2005 日本霊長類学会
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