霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: A-02
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口頭発表
屋久島のニホンザルの行動的体温調節
*半谷 吾郎清野 未恵子早石 周平
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抄録
温帯の霊長類では、体内で熱生産を行って体温を一定に保つ体温調節はしばしば大きなコストになる。そのコストを低く抑えるため、姿勢を調整したり、温度環境がより好適な微環境を選択したり、他個体と抱き合ったりといった、さまざまな行動的体温調節を行うことが知られている。それらの方法がどの程度体温保持に貢献し、またそのような行動をとることによって逆に他の活動をどの程度制限しているのか、といった、より生態学的な側面については、まだよく分かっていない。本研究は、行動的体温調節の生態学的な意義を探ることを目的として、野生個体群でそれぞれの行動的体温調節によってどの程度の温度環境を享受することができているのかを調べた。屋久島の海岸部とヤクスギ林において、温度感受型電波発信機を装着したニホンザルのオトナメスを行動観察した。調査期間は海岸部が2003年10月から2004年3月、ヤクスギ林が2003年10月から2004年1月である。対象個体を個体追跡し、15分間隔で以下の内容を記録した。温度感受型電波発信機の温度、活動内容、個体の位置(地上、樹上何メートルか、日陰か日向か)、そのときの天気、接触している個体の名前と接触の状態、そのときの微気象(気温、風速、風向、湿度)。また、林内の地上から1.5m、10-15m、および樹木の被覆のない海岸もしくは伐採跡地で自動記録装置により温度計測を、林内の地上1.5mの場所で温度、湿度、風温、温熱指標、露点、湿球温度、気圧高度、密度高度、気圧を記録した。サルはどのような場合にどのような温度の微環境を選択しているのか、またそのような温度環境の選択やさるだんごを作るか否かによって、どの程度の温度環境を享受できているのかを明らかにする。これを絶対的な温度環境の異なる屋久島の海岸部と上部域で比較し、行動的体温調節が他の行動をどの程度制限しているのかを明らかにする。
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© 2005 日本霊長類学会
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