抄録
(目的)霊長類における精巣の形態や繁殖システムの進化を考察する上で、原猿類の研究は不可欠であるが、今までほとんどなされてこなかった。われわれは、第19回日本霊長類学会大会で、オオガラゴの精巣組織について報告したが、今回は準超薄切片標本を用いて、より詳細に精上皮の微細構造を観察し、その特徴を明らかにしたので、報告したい。
(方法)オオガラゴの死亡個体(5歳)から精巣を採取した。これを、ホルムアルデヒドとグルタールアルデヒドの混合液で固定、親水性メタクリル樹脂で包埋し、1μmで薄切後、HEで染色し、光学顕微鏡で観察した。
(結果)精上皮は薄く、細胞層は3層ほどからなっていた。精祖細胞、精母細胞、精娘細胞、精子細胞、精子と、すべての精子形成細胞が観察された。その精子形成サイクルには、精母細胞が見られないステージがあるなど、特徴的な様相が認められた。
(考察)これまでの真猿類の精巣微細形態の報告によると、精上皮の細胞層は厚く、精子形成サイクルのすべてのステージに精母細胞が認められる。ところがオオガラゴでは、精母細胞が欠けたステージが認められ、精子形成サイクルの様相が明らかに異なっていた。これが他の原猿類にも認められるかどうかなど、系統的な検討を、今後進めていきたい。