霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: B-04
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口頭発表
アジルテナガザル(Hylobates agilis)の亜種間関係とその系統的位置づけ
*田中 洋之WIJAYANTO HeryR. MOOTNICK AlanDyah PERWITASARI-FARAJALLAH早野 あづさ平井 啓久
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抄録
アジルテナガザルは、スマトラ島山岳地帯に分布するH. a. agilis、スマトラ島低地及びマレー半島の一部に生息するH. a. unko及びカリマンタン南東部のH. a. albibarbisの3亜種が知られている。最近、こうした分類を見直す動きがあるが、分子データを用いて検証する研究はまだない。本研究は、後述するように、他の指標によって亜種ならびに種が明らかにされた個体を用いて、DNA変異の分析を行い、アジルテナガザルの亜種間関係と他の近縁種との分子系統関係の解明を試みた。
形態(第3著者による)と染色体変異の解析(Hirai et al. 2005)により分類されたH. agilis 17頭(亜種の区別不可)、H. a. albibarbis 19頭、H. muelleri 14頭をDNA分析に供した。比較のため、H. lar 2頭とH. moloch 3頭を分析に含め、シアマンを系統分析の外群として用いた。オス31頭でTSPY遺伝子739塩基を、全個体でミトコンドリアND4-ND5領域1040塩基及びD-loop約880塩基を解読し、最節約法及び最尤法による系統分析を行った。また、分類群内・群間の進化的距離を推定した。
3遺伝子領域の分析の結果、albibarbisは他の種よりもスマトラのH. agilisに近縁性を示すことが明らかになった。albibarbisH. agilis間の進化的距離は、種内の距離よりは大きいものの、他の組み合わせの種間の距離のおよそ半分であった。これらの結果は、albibarbisがスマトラ産H. agilisの亜種であるとする従来の分類を支持すると思われた。一方、今回の分子データでは、スマトラのH. agilisの2亜種を区別することができなかった。形態-染色体-DNAの分析結果の比較により、はじめて雑種とわかる個体も存在した。
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© 2006 日本霊長類学会
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