霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: P-30
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ポスター発表
ミトコンドリアDNAによるボッソウのチンパンジーにおける母系多様性の推移および行動への影響
*嶋田 誠早川 祥子藤田 志歩杉山 幸丸斎藤 成也
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抄録
近年一般に野生動植物集団では、人為的攪乱による生息域分断化のため、繁殖集団サイズが小規模になり、対立遺伝子が消失する可能性が増加すると考えられる。1976年から継続的に観察されてきたギニア共和国ボッソウのチンパンジーは、観察当初より約20個体ほどで、継続観察されているチンパンジー集団の中では最小規模である。2003年末の流行病による5個体の死亡、およびその病気で子供を失った母親の消失により、短期間に群れの約4分の1が失われたことは、最近の大きな変動であった。そこで、保全生物学的見地から遺伝的多様性のモニタリングは重要と考えられる。また、チンパンジーでは個体間の近接度または交尾相手の選択といった行動面に、母系が大きな影響を与えると考えられているので、demographicな動態に伴う母系構成の変化が行動面に及ぼす影響は考慮する価値があり、特にボッソウでは思春期以降の離脱が雌雄ともに頻発することを考えると、興味深い。ところが、観察開始時にオトナであった個体同士の母系関係は不明であった。
そこで、ボッソウのチンパンジーの観察以来既知の母系図および人口動態とミトコンドリアDNAハプロタイプとの対応づけを行った。
その結果、1)観察開始時期にすでにオトナであって関係がわからなかったJ家系、F家系、K家系は共通のハプロタイプを有し、合わせると常にボッソウ集団の約半数をこのハプロタイプが占めていた。2)ハプロタイプの割合には有意な変動は見られなかった。3)2003-04年の急激な個体数減少にあって、失われたハプロタイプは無かった。4)同一ハプロタイプを有する3家系は、近接度が高いことが以前から調べられており、母系が行動面での近接度に影響することを裏付けることとなった。血縁度が行動面に与える影響を明らかにするため、今後も継続的に遺伝マーカを増やして、モニタリングすることが望まれる。
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© 2006 日本霊長類学会
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