霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: P-43
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ポスター発表
メスニホンザルにおける血中IGF-1の季節変動
*託見 健伊藤 麻里子清水 慶子林 基治
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抄録
(目的)ニホンザルの生殖機能は明瞭な季節性を示す。この生殖機能の季節性を調節している有力な因子は未だ知られていないが、ニホンザルは体重も季節変動を示すことから、身体組成に関わる因子との関連が考えられる。インスリン様成長因子-1(IGF-1)は、主に肝臓から分泌され、様々な細胞の成長、分化、生存因子として働く、身体成長に重要な因子の一つである。また、IGF-1の中枢投与により春機発動の開始が早まることや、IGF-1が卵胞の成熟、選択性に関与することなどから生殖機能への関与も明らかになってきている。本研究はメスニホンザルにおける1年間の血中IGF-1分泌動態を調べ、血中IGF-1と生殖機能との関係性を検討することを目的とした。
(方法)人工気象室で飼育され、性的に成熟したメスニホンザル5頭より、1年間、週1-2度採血を行い、血清中のIGF-1量をELISA法により測定した。さらに、黄体形成ホルモン、エストラジオール(E)、プロゲステロンをRIA法により測定し、生殖関連ホルモンと血中IGF-1量の関係性を検討した。また、毎日月経出血を確認するとともに、月に1度体重測定を行った。
(結果と考察)初排卵時のEピークの2週間前から最終排卵時のEピークの後2週間までを繁殖期とみなし解析を行った。血中IGF-1は初排卵の時期に一度減少した後に、増加を始め、繁殖期の終了に向け減少していくという分泌動態を示し、繁殖期後の血中IGF-1平均値は繁殖期前、繁殖期中に比べ有意に低かった (ANOVA, F(2, 8)=12.31, p<.05)。このことから、血中IGF-1が生殖機能とともに変動することが明らかとなった。また、1年間を通じて血中IGF-1とE2に正の相関 (r=.42, p<.01) がみられたことから、血中IGF-1がニホンザルの卵巣機能と密接に結びついている可能性が示唆された。
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© 2007 日本霊長類学会
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