霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: A-05
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口頭発表
飼育テナガザルのペアにおけるグルーミングの方向性―再考―
*松平 一成石田 貴文
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抄録
(目的)演者は、テナガザルのペアにおいてグルーミングの方向性(オスからメスへ、またはメスからオスへ)が多様であることを観察し、前回大会で、ペア形成の要因についての配偶者防衛仮説に疑問を呈し、オスは交尾のためにグルーミングをしている可能性があると報告した。今回はそれらの仮説の再検討を行なうことを目的に、更に複数の群れについてペアを観察し、前回までに観察したペアに加えて分析を行なった。
(方法)動物園で飼育されている、シロテテナガザル(4ペア)、ミューラーテナガザル(オス)とアジルテナガザル(メス)(1ペア)、ボウシテナガザル(1ペア)、シアマン(1ペア)の観察を行った。各ペアについて10日間、約60時間における、ペアの間で行われた全てのグルーミングの時間と方向を記録した。
(結果)群れ内に若い(4歳未満の)子どもが存在するペアではグルーミングがオスからメスへより多く行なわれ、存在しないペアではメスからオスへより多く行なわれる傾向があり、3ペアにおいて有意な違い(p < 0.05)があった。グルーミングの総時間は、オスでは群れによらず短い傾向が見られ、メスでは子どもの在、不在に対応して短、長の傾向が見られた。
(考察)若い子どもが存在する群れでは、メスは子どもの養育に多くの時間とエネルギーを費やすため、メスからオスへのグルーミングが短くなった可能性がある。一方、飼育下のオスのテナガザルにはメスを巡る競争の相手となり得る他のオスがいないため、オスはメスを防衛する必要がなく、オスからメスへのグルーミング時間が短くなったことが考えられる。今後はメスから子どもへの投資量、オスへの投資量などを調査して検証を続ける必要がある。
(謝辞)本研究は恩賜上野動物園、横浜市立金沢動物園、浜松市動物園、日本モンキーセンター、Dusit動物園のご厚意により実施することができました。ここに感謝の意を表します。
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© 2007 日本霊長類学会
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