抄録
(目的)マカク属では、攻撃性に種間差がみられる。ヒトではモノアミンオキシダーゼA遺伝子(MAOA)プロモーター領域の反復多型と攻撃性との関連が報告されており、本研究ではマカク属におけるこの領域を解析・比較した。
(方法)マカク属18種、計354個体を用いて、MAOA多型領域をPCR増幅して型判定し、各種のアレル頻度と、攻撃性の指標として優劣関係の寛容性 (Thierry, 2000)との関連性を解析した。さらに、ニホンザル2集団で、個体の優劣関係と遺伝子型との関連性を解析した。また、オナガザル科の他の10種でも塩基配列を比較した。
(結果)18bpを反復単位とした4~10回の反復数を持つアレルが確認された。反復領域の前に6bpの挿入/欠失が存在するアレルもあった。バーバリザル10個体では7回反復アレルのみがみられたが、他種では2~5種類の反復数がみられ、種内多型が存在した。反復単位の塩基配列は、マカクで8種類が確認され、同じ反復数のアレルでも、塩基配列に多様性がみられた。アカゲザル等の寛容性の低い(=攻撃性の高い)種は4~7回反復アレルの割合が多い傾向があり、9、10回反復アレルは確認できなかった。ニホンザルでは7、8回反復の2アレルが存在し、低順位オスには7回反復アレルは認められなかった。オナガザル科の他種では4-10回の反復がみられ、反復単位の塩基配列が新たに7種類確認された。
(考察)マカク属の種間およびニホンザルの種内比較から、攻撃性とアレルとの関連性が示唆された。アカゲザルでプロモーターの転写活性を比較したところ、6、7回反復アレルの転写活性は、8回反復アレルよりも高いと報告されている。今後は、遺伝子型が個体の行動や社会構造に影響するメカニズムの解明を目指し、他種や他のアレルでも転写活性を解析していく必要がある。オナガザル科の他種でも攻撃性の解析指標になると思われる。