抄録
カニクイザルはアカゲザルとならび、医学、薬学、生理学実験など世界でもっとも多くの研究に用いられているサルのひとつである。我々はこれまでにカニクイザル脳、精巣、肝臓、腎臓から10万以上の遺伝子クローンを単離し、約1万クローンについて全長配列を解読してきた。これらの配列情報はヒト遺伝子との対応に基づいて注釈付けられ、カニクイザルcDNAデータベース(QFbase: http://genebank.nibio.go.jp/qfbase/index_j.html)にて公開されている。更に、これらのcDNAクローンおよび配列を利用したDNAマイクロアレイを作製し、各種臓器の遺伝子発現パターンを比較、性能を検討した。また、本年度になりアメリカNIHによるグラントにて行われていたアカゲザルゲノム配列解析チームがその概要配列を発表した。本研究ではそれを受け、アカゲザルとカニクイザルの遺伝子配列をゲノムレベルで比較し、種による塩基配列の違いが実験動物としての外挿性にどれだけ影響を与えるのかについて考察する。近縁種の分岐年代を推定するには、祖先集団での多型を考慮する必要がある。最尤法による推定では、アカゲザルとカニクイザルの種の分化は約110万年前であり、発表されたアカゲザル集団での祖先までの時間よりも新しい。これらの結果は二種が複雑な過程を経て種分化したのではないかという説を示している。