抄録
ブタオザルは、スマトラ島やボルネオ島などの熱帯多雨林から、マレー半島、ベトナム、タイ、ミャンマーなどの熱帯季節林にまで、広大な生息域をもっている。ブタオザルは、Macaca nemestrina nemestrinaとM. n. leoninaの2亜種に分類されている。本研究対象としたブタオザルは、北方に生息するM. n. leoninaであるが、本亜種の社会生態については、情報が乏しいのが現状である。
調査は、タイ王国のカオヤイ国立公園で、公園面積は2,168平方キロであり、高度は246メートルから最高点の1,351メートルにおよんでいる。地形を大きくみれば、標高約800mから900mを平坦面とする大きな台地状になっている。台地面は、高さ30メートルを超える樹冠が連続した湿潤林で覆われている。公園内を通過する道路沿いで半餌付け状態の群れを、人づけして森林内でも長時間の個体追跡を行い、採食データを収集した。総個体追跡時間は375時間であった。
群れの個体数は約150頭であり、遊動域面積は700haを越えていた。採食樹には番号を振り、果実木単位で識別を行い、群れがどのように木選択をしているかを調査した。サルの個体追跡と同時期に、遊動域内に設けられている面積4haの植物フェノロジー研究プロットでは、果実結実調査を行った。この4haプロットでは、結実密度や落下果実量を測定した。本発表では、森林の果実生産状況とブタオザルの果実食生態とを関連づけて報告する。