2020 年 76 巻 1 号 p. 26-42
ラオス国では1990年代からBOT(建設・運営・譲渡)方式のIPP(独立発電事業会社)による水力開発と隣国タイへの電力輸出が進んでいる.後発プロジェクトでは,立地条件の厳しさや少数民族の移転問題等でプロジェクトの成立を左右する程の困難が強いられている.水力IPPの建設契約は,EPC(設計・調達・建設)契約を採ることが多いが,自然由来のリスクを抱えるためプロジェクトコストを押し上げている.同国のナムニアップ1水力発電プロジェクトでは,EPC契約とは異なる契約形態の採用,少数民族移転に対する事業会社の直接関与など,積極的なリスクコントロールに努めてきた.本論文では,リスク分担事例を分析し,建設契約の形態に言及しつつ,今後の海外水力IPPプロジェクトを進めるためのリスクマネジメントの方策を提案する.