抄録
人類にとって戦争と暴力は解決しがたい大きな問題である。半世紀にわたって戦争を避けることに成功してきた日本では、犯罪の凶悪化、虐待による子殺しやいじめという陰湿な暴力が子どもたちを脅かしている。ヒト以外の霊長類にも子殺しや集団間の殺し合いが発生し、暴力は霊長類の社会やその進化にとって必要悪と考える仮説が有力視されている。しかし一方で、近年の霊長類研究は、闘争者同士が積極的に仲直りする行動や仲直りを仲介する行動が普遍的に見られること、また、チンパンジーとボノボのように近縁種でありながら、片方が子殺しや集団間での殺し合いをするにもかかわらず、他方は穏和で集団同士も平和な関係を築く例があることを明らかにしている。本シンポジウムの目的は、これらの研究成果を通じて、霊長類が攻撃行動を抑制しそのエスカレートを防ぐ多様な機構を進化させてきたこと、人類にもその機構と能力が根づいていることを広く明らかにし、その今日的意義を現代思想・社会人類学・教育心理学の研究者および一般参加者と共に深めることである。
司会 細馬宏通(滋賀県立大学)
14:00~14:05
はじめに 黒田末壽(滋賀県立大学)
14:05~14:35
人間の暴力性と進化
西谷修(東京外国語大学)
14:35~15:05
類人猿の社会に見る攻撃性とその抑制の進化
古市剛史(明治学院大学)
15:05~15:25
ヒトの母親は暴力的か-子育ての比較発達
竹下秀子(滋賀県立大学)
15:25~15:50
人類社会形成論と暴力
黒田末壽(滋賀県立大学)
15:50~16:30
総合討論
討論者:伊藤哲司(茨城大学)、曽我 亨(弘前大学)、西田正規