抄録
人間の定義をめぐる議論は長い歴史がある。しかし、20世紀は人文科学と自然科学の間でそれぞれ別個に議論されてきた感がある。「人間」が精神的な態度によって特徴づけられる人文科学の用語だとすれば、「ヒト」は生物としてのシステムやメカニズムを追求しようとする自然科学の用語である。近年、この二つの分野が乖離しては解決できない問題が山積しつつある。人間の社会に頻発する暴力性や性的なトラブルをどう考えたらよいのか。クローンをつくることは許されるのか。脳死は死の定義として採用できるのか。これらの問いは「人間=ヒト」という視点からの解答を迫っている。この時代に、人類学を研究する学者たちが学問の領域を超えて集い、「人間」と「ヒト」との一致点を見いだすことは極めて重要なことと思われる。人類学関連学会協議会に参加している各学会からパネリストを募り、それぞれの学問領域についての「人間=ヒト」の考えを述べ合い、検討したい。
司会 山極寿一(日本霊長類学会)
10:00~10:10
はじめに 馬場悠男(人類学関連学会協議会)
10:10~10:40
ゲノム科学における「ヒト」の位置
太田 博樹(東京大学・日本人類学会)
10:40~11:10
霊長類学にとっての人間=ヒト問題-野生チンパンジー研究からの視点
山越 言(京都大学・日本霊長類学会)
11:10~11:40
霊長類学と人類学:稀少資源をめぐる競合ドグマをめぐって
曽我 亨(弘前大学・日本文化人類学会)
11:40~12:30
総合討論
討論者:河合雅雄、日高敏隆、馬場悠男