抄録
(目的)SV40は1960年代に発見されて以来、アカゲザルを代表としたマカクで高い感染率を示すとされてきたが、自然宿主であるマカクにおいて疾病との関連が不明であるためその感染動態についてほとんど調査がなされていない。今回、飼育下にあるニホンザル(Macaca fuscata)、及び、アカゲザル(Macaca mulatta)におけるSV40の感染動態を調査した。
(方法)2006年9月~11月、京都大学霊長類研究所の放飼群(ニホンザル5群162頭、アカゲザル2群87頭)から採血をおこない、血漿を得た。SV40largeT抗原(SV40TAg)を発現するCOS7細胞を標的抗原とし、蛍光抗体法により、血漿中の抗SV40TAg抗体の有無および抗体価を判定した。
(結果)全ての群において高率に抗SV40TAg抗体が検出された。年齢をアカンボウ(0歳)、コドモ(1~4歳)、ワカモノ(5~9歳)、オトナ(10歳以上)に区分したところ、陽性率は順にニホンザルでは76.7%、76.4%、85.4%、97.5%、アカゲザルでは26.7%、72.2%、93.3%、95.2%となり年齢が上がるほど感染率が高くなる傾向がみられた。母親からの移行抗体の存在を考慮しアカンボウを除くと、陽性率はニホンザルで86.5%、アカゲザルで86.9%となり種差は見られず、性差もなかった。抗体価は高い個体でも80倍に留まったが、年齢が上がるほど抗体価も高くなる傾向があり、抗体価の分布に種差、性差はなかった。
(考察)ニホンザルとアカゲザルは共にSV40感染率が高いことが明らかになった。両種ともSV40感染率及び抗体価は年齢が上がるほど高くなる傾向があった。一般に、潜伏感染を示すウイルスの再活性化は、宿主の免疫状態を反映し、抗体価にも推移が見られる。SV40TAg抗体価も、宿主の免疫状態をモニタリングする新たな指標として検討が期待される。