抄録
多くの野生動物を飼育・展示する動物園は博物館の一つであり、これまでにも飼育動物を対象とした多彩な研究および教育活動がおこなわれてきた。飼育技術や繁殖技術に関する研究が長年続けられ、近年では、希少野生動物の域外保全の舞台として、文字通り「野生動物研究のフィールド」として注目されている。また、動物福祉研究においても動物園は重要なフィールドとして認識されてきた。一方、大学の研究機関においても、野生動物集団やその生息地の危機的状況を受けて、飼育個体群の研究および維持の重要性が認識されてきた。これはまさに域外保全の重要性を指摘するものと言える。また、比較認知科学では、さまざまな動物の認知能力の調査と進化史の再構成という命題が存在し、飼育環境下における動物の行動・認知を詳細に調べることの重要性が指摘されてきた。こうした背景の中、京都大学野生動物研究センターが2008年4月に設立された。「地域動物園や水族館等との協力による人間を含めた自然についての理解」が目標として掲げられ、特に霊長類を含む野生大型哺乳類の研究が京都市動物園と名古屋市東山動植物園との連携で実施される。同センターの設立によって、絶滅危惧種の保全を推進するのみならず、その枠を超えた多様な研究の実現が大学と動物園の連携に期待される。本自由集会では、センターの設立を一つの契機と考え、「大学と動物園との連携によってどのような研究内容が発展してきたか、またどのような新しい研究内容の開拓が今後可能になるか」、「大学と動物園における研究への取り組みの相違点はなにか、大学と動物園の連携における困難をどのように乗り越えるか」をメインテーマとして設定する。開催形式として、特定の話題提供者はたてず、討論参加者を設定し、上記テーマについて議論するラウンドテーブル形式での進行を予定している。