理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: CP307
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運動学
移乗動作を応用するための動作パターン変化についての検討
*篠崎 真枝立本 久美子大橋 ゆかり
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抄録
【目的】脳障害などによる運動障害に対する理学療法は基本的動作の再獲得から開始し,その後これらの動作を日常生活へ応用を図ることが多い.基本的動作を日常生活に応用するためには,動作を環境や身体状況の変化に柔軟に適応させる必要がある.しかし,運動障害者では一定の手順で基本動作を行うことはできても,場面が少し変わるだけで応用が利かなくなることがしばしばある.本研究の最終目的は運動障害という身体状況の変化が根底にある場合に環境の変化が動作にどのように影響するかを明らかにすることであるが,今回はまず,身体活動の制限が課題とする動作をどのように変化させるかという点に焦点をあてた.課題動作として,車椅子で移動を行う障害者にとって,必要不可欠である移乗動作を取り上げ,この動作が身体活動の制限によってどのように変化するかを分析した.【方法】健常成人7名(平均年齢25歳,男性1名,女性6名)を被験者とした.車椅子の右側をベッドに対して30°の角度に配置し,車椅子からベッドへの移乗動作を行わせ,この動作を三次元動作分析システム(Oxford Metrics社製VICON521)を用いて解析した.マーカーは左右の肩峰及び上前腸骨棘に添付した.動作条件は,1)裸足にて移乗動作遂行,2)右下肢に不安定板,左下肢に下肢部分荷重訓練装置(anima株式会社製MP-100)を装着し,左下肢に体重の10%以上の荷重を制限し移乗動作遂行の2条件とした.【結果および考察】三次元動作分析システムで測定したマーカーの座標から移乗動作中の肩峰,上前腸骨棘(以下,ASIS)の高さの変化及び回旋時期を求めた.まず各マーカーの最高到達点の分析では,裸足で測定した条件1に比べ,荷重制限と不安定板装着を課した条件2において肩甲帯の最高点が有意に低くなったが,骨盤帯の最高点には差はなかった.次に動作のシークエンスの分析を行った.分析対象は(1)右肩峰最高点(2)左肩峰最高点(3)右ASIS最高点(4)左ASIS最高点(5)肩甲帯回旋(6)骨盤回旋とした.各タイミングが動作時間のどの時点で生じるかを分析した結果,条件1では(3)→(1)→(6)→(5)→(2)→(4),条件2では(3)→(4)→(1)→(6)→(5)→(2)の順序となった.また条件1では(3)→(4)の過程が動作時間の44.5%から55.6%の範囲で,条件2では(3)→(2)の過程が50.6%から65.1%の範囲で起こった.動作のシークエンスにおいて,左ASIS以外は条件によらず一致していた.即ち,条件1では骨盤が傾斜した肢位で体幹の回旋が行われていたが,条件2では骨盤が水平位をとってから回旋が行われた.動作時期は条件2の方が開始が遅くかつ各分析対象点の間隔が長くなっていた.以上の結果より,移乗動作に際し身体活動を制約されると運動プログラミングに通常より時間を要し,かつ体幹が安定する肢位で動作を遂行しようとすることが示唆された.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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