霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: A-16
会議情報
口頭発表
マカク新種 Macaca munzala の系統地理的評価
*川本 芳, 相見 滿, WANGCHUK Tashi
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】インドのArunachal Pradesh西部から報告されたマカク新種とアッサムモンキーのmtDNA配列を比較し、新種記載の妥当性を検証すること。
【方法】Chakraborty et al.(2007) が新種について報告した cyt b とD-loopの部分塩基配列に相当する箇所をアッサムモンキーの西方亜種 M. a. pelops(ブータンで採取した糞と血液試料を分析)ならびに東方亜種 M. a. assamensis(タイ、ラオスで採取した血液試料を分析)と比較した。
【結果】cyt b およびD-loopの塩基配列を比較した結果、分子系統的に munzala はアッサムモンキーの西方亜種 pelops と区別できなかった。また、これらは東方亜種 assamensis から大きく分化していた。地域分化では、ブータンとアルナチャール地域のサルが示す遺伝子多様性は、インドシナ地域のアッサムモンキーとの比較から、ヒマラヤ山岳地帯の局所にもかかわらず大きいと推定された。
【考察】munzala の種判定では、アッサムモンキーが南アジアから東南アジアにおよぶ東西地域で大きな遺伝分化を示すことの考慮がなく、西方亜種との比較をせずに分子系統解析から結論を下していることが問題である。今回の評価では、アルナチャールのサルで報告された遺伝子配列はアッサムモンキーの西方亜種 pelops と判定でき、新種を記載する根拠にはならなかった。munzala については形態の違いも指摘されているが、アッサムモンキーの形態に関する地域変異の詳細は不明である。Chakrabortyらが提案した sinica グループの種分化の起点をミャンマーに置く仮説はその根拠を再検討する必要がある。
著者関連情報
© 2008 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top