抄録
目的:Delson(1980)の進化シナリオによれば、南アジアで最初の適応放散を遂げたマカク属は、東南アジアへ、そして中国へと分散し、各地で種を形成したと推定されている。その後、東南アジアなどで、形成されたマカク種が逆に南アジアへと分散したと考えられている。その際に移住を妨げたものは、インド東北地方にあるヒマラヤ高地やブラーマプートアラ河などの地理的障壁がある。ここには、氷河期におけるレフュジア(避難所)も推定されている。この地方には、インドで起源(種形成)し、ブラーマプートラ河の両岸に分布し(西にはpelops亜種、東にはassamensis亜種)、中国や東南アジアへ放散したアッサムモンキー(Macaca assamensis);東南アジアもしくは中国で種形成され、その後に東北方向へ分散したが、ブラーマプートラ河を越えて西進していない北ブタオザル(M. nemestrina leonina)とベニガオザル(M. arctoides);さらに東南アジアで起こり、その後、いったんインドとその近辺と中国のそれぞれのレフュジア・センターに隔離され、後氷期に両センターから移住分散し連続分布するようになったと思われるアカゲザル(M. mulatta)が分布する。2005年に同地方よりアッサムモンキーに近縁のタワン・モンキーマカク(新種M. munzala)が報告されている。このようにこの地域のマカクの生物学的特徴を明らかにすることは、上記の進化史シナリオを検証し、マカクの進化史解明に寄与すると思われる。
方法:2007年10月に予備調査(巡回・アンケート)を行った。
結果:アッサム州のいくつかの地域で4種マカクの分布を確認した。アルナーチャル・プラデシュ州で3群のタワン・モンキーを観察した。
考察:4種マカクおよびタワン・モンキーの観察と系統地理学的研究は十分可能である。