霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: B-14
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口頭発表
なぜサルは農地に居つくのか?:計算機実験による空間構造の分析
*堀内 史朗, 高崎 浩幸
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抄録
ニホンザルの野生群が農地付近に高密度で分布している。群れのサイズは山に居る群れより大きく、それが猿害群の特徴となっている。農地の資源価値が山の資源価値より高いことが、サルが農地に居つく原因とみなされてきた。猿害対策が失敗する原因として、不十分な農地管理・サルの人里動物化が挙げられてきた。しかし複数の群れが資源をめぐり争う空間構造を踏まえれば、農地に大サイズの群れが現れるのは必然ではないだろうか。この仮説を検証するため計算機実験を行った。サイズの異なる複数の群れが二次元平面上に分布し、資源をめぐって互いに争う。サイズの大きい群れが競争に有利で、競争に敗北した群れは資源を失う。十分な資源を獲得できない群れのサイズは小さくなり、他の場所に移動する。このような設定の下、十分な時間が経過してから、二次元空間の境界域(農地)と中心域(山)に分布している群れサイズ・密度を比較した。計算機実験の結果、農地の資源価値が山の資源価値に比べて十分低い場合でも、農地にいる群れのほうが山にいる群れよりサイズが大きくなることが分かった。この意外な結果が生じる理由は、1)農地の群れは競争相手が少ない。2)マルコフ連鎖の果てに空間の境界である農地には多くの群れが滞留し、競争に敗れる小サイズの群れは山に逃げる。その結果、大サイズの群れが農地に残る、の二つが挙げられる。また農地から山へと人為的にサルを追い上げる効果も考慮して再実験を行った。その結果、山の資源価値が低い(サルの密度が低い)場合、追い上げによって農地の群れサイズ・密度が山に比べて劇的に下がることが分かった。じっさい秋田県八峰町では、ボランティアや犬による追い上げでサルが農地に現れにくくなった。サルの密度が低い東北地方では、農地管理より追い上げが重要な対策であると示唆するものである。
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© 2008 日本霊長類学会
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