霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: C-03
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口頭発表
野生アジルテナガザルの歌における地域差の検討
*親川 千紗子香田 啓貴田中 俊明NURUL KAMILAH SantiBAKAR Amisir村井 勅裕正高 信男
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抄録
テナガザルの発声行動は「歌」と呼ばれ、種特異性および性特異性が認められ複雑で精緻なコミュニケーションである。この音声は遺伝的に固定された種特異的なパターンを持つ一方で、近年では地域間で音響的な変異性が存在するという、音声の可変性に基づいた音声の地域差に関する報告が増えつつある。つまり歌は種間では遺伝的に固定的であるが、種内においては遺伝的な要因以外にも影響を受けて変異すると考えられる。そこで、本研究ではマレー半島、スマトラ島、ボルネオ島と大きく3つに分断された地域に広く生息している野生アジルテナガザルを対象に、10地域の音声を録音分析し地域差の検討をおこなった。各地域の音声の類似性を検討するために、主成分分析で得られた成分得点を用いてクラスター分析をおこない地域間の歌の「音響的距離」を測った。その結果、各地域の音声は地理的に分断された3地域、マレー、スマトラ、ボルネオごとに音声が類似することが分かった。つまり音声の地域差はある程度地理的な隔離状況やその集団間の遺伝的な距離によって説明されたと言える。しかしその一方で、スマトラ内の集団では、遺伝的にもっとも近接していると予測される地域間で期待以上の大きな集団間変異を確認した。これは、地域間変異が純粋な遺伝的な差異によって説明されるものではなく、音声の可変性という能力を基盤とした現象であることが示唆された。
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© 2008 日本霊長類学会
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