霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: C-02
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口頭発表
離合集散を生み出すチンパンジーの長距離音声・パントフートを介した相互行為
*花村 俊吉
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抄録
チンパンジーは離合集散して視覚的な出会いと別れを繰り返す。そして、長距離音声・パントフート(ph)を用いて、離れていて見えない個体どうしが鳴き交わしたり、近くにいて見える個体たちがコーラスすることがある。しかし、これまでのph研究の多くは、社会生物学の観点からオスの発声の機能を検討したものであり、離合集散する多数個体が遊動方向を同調させたり(集合)、phの届く範囲さえ超えて離れて居続ける(分散)といった、phとグルーピングの関連はよく分かっていない。
そこで本発表では、phのやりとりをオス・メスに関わらず発声個体と聴取個体との間に生じる相互行為として捉え、発声/聴取両方の行為からphとグルーピングの関連について検討する。分析には、タンザニア・マハレMグループチンパンジーを約1年間観察して得た記録を用いた。
その結果、1)単独時のph発声は、声の届く範囲に他個体がいる可能性が高い状況で発声されることが多く、発声個体は発声直後に視界外他個体の返事を期待することがあった。2)視界外phに対する聴取個体の返事率は高くなく、鳴き交わさなければ離れて居続けることが多いが、鳴き交わすと視覚的な出会いに至ることがあった。3)コーラスphの半数近くは個体間の視覚的な出会いや近接をきっかけに生じており、発声状況に関わらず視界外他個体が返事することがあった。4)鳴き交わしの連鎖は1往復で終わることが多いが、さらに続く場合3ヶ所以上の個体たちが参加することが多かった。したがって、声は聴こえるけど見えないという個体どうしの状態や、個体間の視覚的な出会いや近接がきっかけになってphが繰り返し発声され、それがまた多数の聴取個体たちとの聴覚的・視覚的な出会いを生み出し、このプロセスが集合として観察される一方、聴取個体の返事がないことで離れて居続けることが再生産され、このプロセスが分散として観察されていると考えられる。
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© 2008 日本霊長類学会
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