抄録
【目的】 ANPとBNPは、利尿作用と血管拡張作用により体液循環量の調節を行なうNa利尿ペプチドの代表であり、ANPは主に心房で、BNPは主に心室で産生・分泌され、ヒトでは心不全の重症度評価や予後判定因子として臨床応用されている。一方、ニホンザルの循環器に関する研究はほとんど実施されていない。今回、我々は、ニホンザルにおける基準値を確立することを目的として、若齢コロニーにおいてANPとBNPの測定を行った。
【方法】 臨床的に健康なニホンザル、雌50頭(20月齢~64月齢)、雄45頭(27月齢~63月齢)の計95頭から採血し、ANP(RIA法)とBNP(IRMA法)を測定した。
【結果及び考察】 今回の実験で得られた成長期ニホンザルのANPの基準値は、26.0±11.7pg/ml、BNPの基準値は、5.1±1.5pg/mlであった。この基準値外のサルは、ANPで0.1%、BNPでは0.05%であり、若齢のサルの正常な基準値が得られたものと思われる。さらに得られた測定値を、月齢別、雌雄別に分類し、グラフ化して検討を加えたところ、BNPは雌雄ともに月齢が上がるにつれて若干増加傾向がみられたが、ANPは、雄ではほぼ横ばいであったのに対し、雌では月齢が上がるにつれ若干の減少傾向がみられた。またヒト基準値(ANP:43.0pg/ml、BNP:18.4pg/ml)と比較すると、若齢ニホンザルは低値を示した。今回の基準値によって、今後、ニホンザルの心不全の診断が、血液検査で実施できる可能性のあることが示唆された。