霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: A-02
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口頭発表
和歌山県タイワンザル交雑群および周辺地域のニホンザルにおけるY染色体マイクロサテライト多型
*齊藤 梓川本 芳
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抄録
和歌山県大池遊園周辺地域では、1950年代の放逐が原因と考えられる外来のタイワンザル(Macaca cyclopis)とニホンザル(Macaca fuscata)との交雑が確認されており問題視されてきた。2001年からの捕獲除去により交雑群の個体数は減少したが、残りの個体の完全捕獲はさらに難しくなっている。また、交雑群から近隣のニホンザル群へとタイワンザルの遺伝子が移入され遺伝的撹乱が起こりうる可能性も危惧されている。
今回、Y染色体上のマイクロサテライト遺伝子座(DYS472、DYS569、DYS645)おける交雑群および和歌山・三重県各地のニホンザル群、また他地域のタイワンザル(青森、岩手、伊豆大島、KUPRI)の多型をと比較した。その結果、紀伊半島のニホンザルのY染色体は多様性に富み、多くのハプロタイプが見つかった一方で、タイワンザルの遺伝子は非常に均一性が高く、特に交雑群のタイワンザルでは1種類のハプロタイプしか確認されなかった。また DYS472、DYS645ではそれぞれの対立遺伝子が純粋なニホンザル、タイワンザルを見る限り、種特異的であった。しかし、交雑群の雑種では、紀伊半島内の他のサンプルでは確認されておらず、なおかつ対立遺伝子での分析でタイワンザル特異的に固定していると考えられた遺伝子を3種類の遺伝子座のうち1 種類あるいは2種類持つ7つのハプロタイプが見つかった。
Y染色体上では組み換えが起こりにくいことを考慮すると、ハプロタイプに特徴づけられるニホンザルとタイワンザルのY染色体は異なっていた。今回のY染色体マイクロサテライト遺伝子は今後種判別マーカーとして交雑群からのタイワンザル遺伝子の流出のモニタリングや新たに他地域で交雑が疑わしい個体が発見された際の初期検査として適用しうるかもしれない。しかし、他のマーカーとの併用やさらに多くのサンプル数が必要そうだ。
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© 2008 日本霊長類学会
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