霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: P-28
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ポスター発表
霊長類における子どもの背中での運搬
*中道 正之山田 一憲
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抄録
ニホンザルの赤ん坊は、誕生直後から母ザルの胸にしがみつき運んでもらい、生後1,2ヶ月頃からは背中にしがみついて運んでもらうようになる。
そして、この背中での運搬は1歳を越える頃までは見られる。しかし、背中での運搬は全ての霊長類に共通の子どもの運搬様式ではない。例えば、旧世界ザルのコロブス亜科のサル類では、背中での運搬は見られないようである。また、ヒヒでは背中での運搬が一般的だが、パタスモンキーやベルベットモンキーではとても少ない。
マカク類でも、ニホンザルのように背中での運搬が一般的な種から、チベットモンキーのように、背中での運搬が少ないと思われる種まである。他方、新世界ザルではほとんどの種で背中での運搬が認められるようである。
本発表では、赤ん坊の毛色がおとなとは異なり目立つかどうか(幼体色の有無)、地上性か樹上性か、母以外の集団メンバーと赤ん坊の関わり方(infant-transferringやinfant-handlingの有無)、さらに、子どもの成長の早さや母子関係の緊密さなどが、母による子どもの背中での運搬の有無と関係があるのかどうかを検討する。
本研究では、まず文献や研究者からの情報に基づいて、可能な限り多くの種で背中での運搬の有無を確定する作業を行った。その結果、おとなとは全く異なる毛色の幼体色を持つ種では、背中での運搬がほとんど認められず、母ザル以外の集団のメンバーが生後間もない子ザルを触る、抱く、運ぶなどの積極的な関わりがあり、母ザルもこれらの行動を許し、子ザルの母ザルからの独立も早い傾向がうかがえる。
他方、ニホンザルのように、地上性の傾向が強く、子どもを背中で運搬することが一般的な種では、子どもに幼体色がなく、樹上性の種、あるいは、地上性でも背中での運搬が少ないと思われる種に比べて、母子の結びつきが相対的に強く、より長期に持続する傾向があると思われる。
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© 2008 日本霊長類学会
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