霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: P-33
会議情報
ポスター発表
野生ニホンザルの毛づくろい前の音声使用:1才半のコドモの場合
*菅谷 和沙
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
目的
ニホンザル(Macaca fuscata)は、毛づくろいを始める前に声を出すことが知られている(Mori, 1975; Masataka, 1989; Sakura, 1989; 志澤, 2001)。これは、毛づくろいを行うか受けるかという役割分担を予め伝達するためである、緊張を緩和するためである、などといわれている。しかしながら、先行研究の多くがオトナメスを対象としており、幼児の音声使用についてはあまり知られていない。そこで本研究では、1才半のコドモが毛づくろい前に声を出すのか、出すとすればどのような相手に対して出すのかを検証する。
方法
調査対象は金華山B1群の1才半のコドモ3個体で、調査期間は2007年9月から11月までである。調査期間中は交尾期にあたるが、母親が発情していない時期に調査を行った。1個体につき10時間追跡し、ビデオカメラで記録した。分析にはFisherの正確確率検定を用いた。
結果
コドモの相手ごとの毛づくろい頻度、毛づくろい前の発声率と音声使用について以下のことがわかった。
(1) 毛づくろい頻度は相手が血縁のオトナメスとコドモの場合に最も高く、次いでオス、非血縁のオトナメスであった。
(2) 発声率は平均39%である。
(3) オトナに対してもコドモに対しても声を出していた。
考察
1才半のコドモは同群のオトナメスに比べ、血縁のオトナメスとの毛づくろい頻度が高く、非血縁のオトナメスとの毛づくろい頻度が低かった。
1才半のコドモと同群のオトナメスの音声使用を比較したところ、発声率には有意な差がみられず(p>0.05)、どちらもオトナに対してもコドモに対しても声を出していた。このことから、1才半のコドモもオトナメスと同様に声を出している可能性が示唆された。
コドモは血縁のオトナメスとの間で音声使用を獲得し、成長にしたがって非血縁のオトナメスとの間でも声を出すようになると考えられる。
著者関連情報
© 2008 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top