抄録
餌付け群において、上位雌は下位雌に比べて投与餌を多く獲得することが、幸島や高崎山などで明らかになっている。しかしどのような食物品目で差がつきやすいのか、順位格差が生じるのは餌取りへの参加率に差があるためか、それとも餌取り一回あたりの獲得量に差があるためか、明らかにはなっていない。そこで、大分市高崎山自然動物園で餌付けされているニホンザルを対象に、上位雌と下位雌の間で採餌行動の比較を行った。高崎山自然動物園ではニホンザルにコムギとサツマイモを与えており、演者は品目ごとの餌取りへの参加率と獲得量を調べてきた。予備的研究(栗田, 2007: 霊長類研究, 23:25-32)でわかったことは次のとおりである。
(1)上位雌は下位雌に比べて多くの餌を獲得した、(2)その差はサツマイモよりもコムギの方で大きかった、(3)下位雌のコムギ獲得量が少ないのは、コムギ取りへの参加率が低いこととコムギ取り一回あたりの獲得量が少ないことによるものであった、(4)サツマイモ取りには全対象個体が参加し、獲得量に順位差はなかった、(5)獲得量の個体間ばらつきは、サツマイモよりもコムギの方が大きかった、(6)上位雌は下位雌の約2.2倍のカロリーを餌から獲得していた、(7)体重値から求めた必要カロリーに占める、投与餌からの摂取カロリーの割合は、上位雌では86.8±12.3%であったのに対し、下位雌では34.8±12.3%であった。
これらの予報では、対象個体が少なく、2つの群れからの個体が混在するなどの問題があった。そこで予報の後、対象群を一つに限定し、対象個体を増やして追加調査を行っている。まだ若干のデータ収集追加を計画しているが、予報での上記の結果((1)~(7))を追試し、餌獲得量に順位格差が生じるメカニズムについて考察を行う。