霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: A-3-3
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口頭発表
霊長類ゲノム配列を用いた嗅覚受容体遺伝子の比較解析:ヒトの嗅覚は他の霊長類よりも劣っているのだろうか?
*松井 淳郷 康広新村 芳人
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抄録
嗅覚受容は,7回膜貫通型の嗅覚受容体が環境中のにおい物質を分子認識することにより開始される。多様なにおい物質に対応するために,ゲノム中には多数の嗅覚受容体遺伝子が存在し,それらは哺乳類最大の多重遺伝子族を形成している。
霊長目の進化の過程において,三色色覚の発達と引き換えに嗅覚の相対的な重要性が低下し,嗅覚受容体遺伝子が失われていったとする仮説がある。嗅覚機能の進化の道筋や,ヒト嗅覚の特異性を理解するためには,霊長目の様々な種についてゲノムデータから全嗅覚受容体遺伝子を網羅的に同定し,比較解析することが重要である。そこで本研究では,オランウータン,マーモセットのゲノム配列から,嗅覚受容体機能遺伝子・偽遺伝子の同定を行い,これまでに同定されたヒト,チンパンジー,アカゲザルの遺伝子と共に比較解析を行った。
その結果,マーモセットの偽遺伝子の割合は,他の4種に比べて低いことが分かった。マーモセットは完全な三色色覚をもたないので,これは先行研究と一致する結果である。しかしながら,マーモセットの機能遺伝子数はヒトやチンパンジーとほとんど同じで,むしろアカゲザルやオランウータンの方が少なかった。このことは,偽遺伝子の割合では機能の優劣を推測できないことを示唆している。さらに,5種間で嗅覚受容体機能遺伝子の相同遺伝子を同定し,比較解析を行った。その結果,狭鼻猿類の系統で機能遺伝子は徐々に失われており,三色色覚の獲得によって嗅覚受容体遺伝子が急激に失われたということはないことが示された。また,5種の共通祖先がもっていた嗅覚受容体遺伝子は,ヒト,チンパンジー,マーモセットに比べてオランウータン,マカクでより大きく失われていた。従って,他の霊長目に比べて,ヒトの嗅覚はそれほど退化していないと考えられる。
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© 2009 日本霊長類学会
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