霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: A-3-4
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口頭発表
ニホンザル・アカゲザルにおける苦味受容体遺伝子T2R38の多型解析
*鈴木 南美菅原 亨松井 淳郷 康広平井 啓久今井 啓雄
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抄録
ヒトやチンパンジーでは,PTCという苦味物質に対する苦味感受能力に個体差のあることが古くから知られていた。この個体差は,舌で発現している数十種類の苦味受容体遺伝子(T2R)の1つであるT2R38の変異が要因であることが近年報告されている。
我々は,T2R38の種内・種間多型をニホンザルおよびアカゲザルで解析し,他の霊長類種と比較することで,T2R38の種内多型が存在する意義や味覚機能との関連性,進化の過程で変異の起こった背景を明らかにすることを目的に研究をすすめた。
霊長類研究所内で飼育されている合計243個体の遺伝子型を決定した結果,ニホンザルではT2R38遺伝子中に9カ所,アカゲザルでは7カ所で一塩基多型(SNP)が同定された。他のT2R遺伝子(T2R3,4,10,16,40など)では各遺伝子あたり平均1カ所のSNPが同定されたのに対して,T2R38では多くのSNPが観察された。
このことから,ニホンザルやアカゲザルでもヒトやチンパンジーと同様にT2R38の遺伝子多型が苦味感受性に個体差を生じさせている可能性が示唆される。2種の多型解析結果から,ニホンザルとアカゲザルのT2R38ではそれぞれ独立に9種類のハプロタイプがあることがわかった。また,ニホンザルのT2R38は大きく2つのクラスターに分けられた。
両者の違いは,受容体の細胞内領域に存在している2つのアミノ酸置換であり,Gタンパク質などの細胞内情報伝達系との相互作用に影響を与えている可能性が示唆される。発表ではこのようなアミノ酸変化に着目して,T2R38の遺伝子多型の成立過程や,受容体の機能に基づいた味覚の個体差との関係性について議論したい。
また,T2R38が受容する物質はアブラナ科植物に含まれる苦味物質に類似しているため,霊長類の食性とT2R38の遺伝子型についても考察する。
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© 2009 日本霊長類学会
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