抄録
ニホンザル(Macaca fuscata)は毛づくろいを円滑に進めるために様々な音声を用いることが知られているが,音声使用の学習過程については十分に調べられてこなかった。そこで本研究では,離乳前のアカンボウがどのように音声使用を学習するかを検証した。
2008年4月から9月に,鹿児島県屋久島に生息するニホンザルのアカンボウ(雌雄3頭ずつ)を個体追跡し,デジタルビデオカメラを用いて毛づくろい前の行動を中心に記録した。
調査の結果,毛づくろい前の音声使用は,生後3ヵ月ごろまでに学習されることが明らかになった。これは,リップスマッキング,ハグハグ,催促行動などが毛づくろい前に現れるのと同時期である。
ニホンザルのアカンボウは,生後まもないころからコンタクトコールを用いて他個体と関わり合うが,生後3ヵ月ごろまでに,毛づくろい交渉においてもこのような音声を用いるようになる。ニホンザルは,声の上げ下げや応答のタイミングを学習するといわれているが,文脈に適した音声使用についても学習することが示唆された。